剣狼―幕末を駆けた七人の兵法者 (新潮文...

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剣狼―幕末を駆けた七人の兵法者 (新潮文庫 し 5-91)


新潮社

価格(new/used): 580 円 / 81 円 より
発売日: (2007-05) アマゾン売上ランキング: 307652 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 2件

兵法者と呼ばれる人たちは、どういう存在だったのだろう?
子供の頃はちょうど時代劇ブームで、家から黒っぽい風呂敷を持ち出して鞍馬天狗や月形龍之介に変装し、チャンバラに明け暮れては母親から叱られていた。時代が知れるが、今の子供たちがサッカーや野球の選手に憧れるのと同じ理由で、それぞれが贔屓の「剣士」を持っていたように記憶する。過ぎること幾十年ですっかり齢を取ってしまったが、近年時代小説を読む機会が多くなり、かつてのアイドル剣士たちを懐かしく思い出していた。そうしたところ、本書のカバー装画が目に留まった。

当時の子供心には知る由もないが、社会人として職を得て生活している今では「剣で身を立てる」という事実は凄まじく、私の想像の域を遥かに超えるものである。勝負とか試合と言ってもスポーツではなく、生きるか死ぬかの命(と名誉)を賭した果し合いなのだ。「剣豪」として名を成すためにどれ程の修行に耐え、またどれ位の修羅場を潜り抜けてきたのかは想像を絶するものがある。漢(おとこ)として生を受け、1つの兵法流派に属しあらゆる技量を磨いてただただ剣の達人を目指す。今では想像もできない世界がそこにはある。

本書には、幕末という騒然とした時代を(好むと好まざるに係わらず)駆け抜けた、7人の剣豪たちのそれぞれの生きざまが描かれている。書き手も異なり切り口も違うことから、一人一人の個性が際立っていて面白い。後世に及んで「剣士」と「人斬り」ではイメージは随分異なるが、時代を生きた当人たちにはそういった意識がはたしてあったのだろうか。巻頭の「兵法流派系統図」と巻末の総解説「剣豪と流派」はとても面白く、これからも役に立ちそうだ。それにしても、横山明氏の画は雰囲気を良く掴んでいる。
幕末の剣豪の激しくも切ない生き方7編です
副題に「幕末を駆けた七人の兵法者」とありますが、この場合の「兵法」とは「孫子の兵法」のような軍学ではなく、「武芸をよくする者(この場合は剣豪、剣客)」の意味で使われています。幕末に活躍した神道無念流、北辰一刀流、示現流などを能くし、ときには人斬りとも恐れられた人物を1つの流派でひとりずつ採りあげたアンソロジーです。各編の著者は菊池寛から津本陽、杉本苑子をはじめとした重鎮7人。どの短編も剣士の生き様に焦点を当てているのは当然ですが、その切り口が違い、それぞれに楽しめます。

愛する人を失ったうつろな内面を埋めようとするがごとく剣をふるう者、師と袂を分かち、剣の道を研究しつくす者、剣士としての死に場所を求めてさまよう者、剣にこだわりながら明治の世を生きる者…官軍・幕府といった明確な色分けで進む物語というよりも、どれをとっても激しい剣士の生き様ながら一抹の切なさをはらんだ読後感が残ります。

個人的には、巻頭の「兵法流派系統図」と巻末の総解説「剣豪と流派」が役立ちました。時代小説は好きなのに幕末の江戸の流派には疎い私には大いに助けになりました。

というわけで、切なさを含んだ読後感と資料的要素を考えると☆5つなのですが、某作品に「それはどうだろうなぁ」と思った展開もあるので、1つマイナスしてこの評価とします。