寝ぼけ署長 (新潮文庫)

- 新潮社 価格 ¥ 580
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寝ぼけ署長 (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 580 円 / 1 円 より
発売日: (1981-08) アマゾン売上ランキング: 107005 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 3件

現代風周五郎
 山本周五郎唯一の探偵物。時代も昭和初期っぽい。しかし、周五郎らしい人情味あふれる話で、十分に山本周五郎を楽しむことが出来ます。ほかにもミステリー要素の強い話もありましたが、この作品は何かが違います。
 主人公(?)である寝ぼけ署長は一癖も二癖もある人物ですが、人並みはずれた深い人情にあふれていて、周五郎の理想とする人物をうまく投影できているのではないでしょうか?「赤ひげ診療譚」の赤ひげにどことなく通ずるところもあります。
 新鮮だったのが語り手。寝ぼけ署長の付き人のような人物が一つずつ事件を語っていくという形を取っています。ほかにもありそうで少し雰囲気が違う感じがして新鮮でした。周五郎の筆力のなせる業なのでしょう。
 違和感がありながら、妙に納得してしまう寝ぼけ署長の人柄が堪らなく良い作品です。「赤ひげ診療譚」と一緒に読むことをお勧めします。
周五郎が描く現代小説の傑作
 個人的にこよなく敬愛する周五郎ですが、現代小説はあまり嗜好にあいわないと考えていました。しかし、同じような先入観を持っている人も気にせずに読んでみてください。

 寝ぼけ署長とあだ名される主人公が着任から離任まで、10の事件を解決し、それぞれが読みきりの短編の形をとっている。

 頓知をきかせコミカルに、そして周五郎独特の人情味あふれる物語は、読む者をあきさせませんし、少し目頭を篤くもなります。

 この署長はけっして犯罪者を生み出そうとしない。無論、犯罪者が存在しない社会などあり得ないし、社会が奇麗事ではすまされない事実を作者はよく理解している。

 文中にある署長の言葉だ

「犯罪は懶惰な環境から生まれる、安逸から、狡猾から、無為徒食から、贅沢、虚栄から生まれるんだ、決して貧乏から生まれるもんじゃないんだ、決して。」

 罪が生まれる姿は、社会を映す鏡なのだと、考えさせられる作品です。

人情ミステリ
新しく着任してきた警察署長は、暇なときには椅子の上で居眠り、暇でないときにもやっぱり居眠り。新聞記者のつけたあだ名が「寝ぼけ署長」。しかしこの人、頼りにならないのかと思えばそうではなく、気になる事件がおきると自ら乗り出して、周りの人があっと驚くような方法で解決してみせる。なんとも愛敬のある寝ぼけ署長の事件簿、 10編が収められた短編集です。

盗難、殺人などの事件、ちょっとしたトリックも使われていたりはするのですが、そんなものよりも、いつでもどこでも寝られる特技(?)、貧しい人たちに向ける優しい視線、「罪を憎んで人を憎まず」の精神など、寝ぼけ署長その人のキャラクターがよく書けていて、いい味を出しています。反面、どの話しも人情話めいていて、ミステリとしては物足りなさも感じますが、そんなことはあんまり気にしないで、寝ぼけ署長の繰り広げる人情ミステリをシミジミと楽しみましょう。