芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

- 新潮社 価格 ¥ 420
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芽むしり仔撃ち (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 420 円 / 275 円 より
発売日: (1984-01) アマゾン売上ランキング: 47667 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 15件

体感したような気分になった
こんなに自分の五感が、活字に乗せられていくのを感じた事はないかもしれません。
閉じ込められた小屋の中での小便の匂い、病気で死んだ動物達が山積みされている光景と、誰も語らないけれど蔓延するのだろうという恐怖、干し魚と野菜と米で作った雑炊の味。

最初から最後まで、ずっと怒りながら読んでいました。閉鎖された環境や、人が人を殺すのが珍しくない時代には、人間同士のルールはこんなにもねじ曲がってしまうのか。

主人公の少年達は子供であるが故のたくましさも持っているけれど、子供であるが故に、どうしていいかわからず大人を見てどうしても安堵してしまう面もある。その度に、騙されるな、もう信じるな、と思っていました。
文学はこれほど面白いのか!
19年も前のことなのに、
読み終わったときの興奮を
今でもありありと思い出すことができる。

文学はこれほど面白いのか!と震えるような気持ちで思った。

純文学の面白さを堪能したい方に、
ぜひオススメしたい。

大江文学を読破しようとお考えの方も、
まずはこの1冊からどうぞ。
大江文学の入門書としてもオススメ。
完成度の高さに感嘆
大戦末期、感化院の少年たちは山奥の村へ疎開させられるが、そこで疫病が発生したため、
少年たちは村人達から見棄てられ、山奥に閉じ込められる。
疎外された少年たちは、朝鮮人の少年、疫病で母を失った少女、山狩りから逃れた脱走兵らと隔離された村の中での束の間の自由生活を獲得し、厳しい戦時下での不思議な理想郷を実現したかに思えたが・・・
少年達は大人たちの身勝手な都合で束縛されたり、見棄てられたり、また時には懐柔させられようとする。
そして、村の大人たちの狡猾さ、残酷さ、理不尽さが強烈に印象に残る。
これは、戦争という狂気によって作られたものなのか、それとも利己的な人間本来の姿なのだろうか。
私は、戦時中に少年時代を過ごした大江氏が、戦時中に感じた大人たちへの怒りにも思えたのだが、どうだろうか。
ちなみに本書は大江氏が23歳の時に発表された処女長編であり、その完成度の高さに感嘆した。

タイトルがすばらしいです。
 この小説でいちばんすばらしいのはタイトルです。意味は小説を最後のほうまで読めばわかります。二百ページほどの短めの長編ですが、なかなかに読み応えのあるものになっています。ほとんどリアリティはないらしく、一種のファンタジーになっているらしいのですが、そんなこと当時を知らない私にとってはわかりようがありません。
 大江健三郎がデビュー当初からモチーフにしている、「内」と「外」の話です。閉じこめられたのか農村で自由の王国を建設する子供達。閉ざされているのに彼らは自由と感じています。しかし、いざ外にでて大人達と邂逅すると、彼らはもう思い通りにはふるまえません。大人たちの力によって挫折し、涙を流します。外にあるのに自由はないのです。閉ざされた空間と閉ざされていない空間、私たちはそのふたつの概念を前にすると自由という概念さえ失ってしまうのです。
面白いよ
確かに、大江健三郎はいまや朝日系メディアと中国・韓国以外の誰にも興味を持たれない存在かもしれない。確かに、いまや方向転換も出来なくなった六十〜七十年代ファッション左翼の田舎者かもしれない。確かに、「私はノーベル賞、ノーベル賞、ノーベル賞」と振りかざす老いた姿はイタイかもしれない。
これはもう「学生作家」の運命というか、私の見る限り、社会人経験もなく小説家として成功する人には「イタイ」タイプが多い。世間知らずだし自己陶酔型だ。こういう人たちは社会経験がないので大抵すぐにネタが尽きる。大江健三郎の場合、尽きたネタを補うべく「政治」に行き、行ったら「陶酔」してしまったのだろう。当時は左翼文化人をやってそれらしい発言をしていれば、高邁でエライ人のように扱われた。人間、チヤホヤされたら嬉しい。「正義」故にチヤホヤされればさらに陶酔する。「正義」はあまりに気持ちが良いので、一度それで売ったら最後、二度とそれを手放せなくなる。
さて、大江健三郎について最も注目に値するのはタイトルの上手さではなかろうか。「タイトルが絶品」は故山本夏彦さえ指摘なさっていたことだ。この小説はタイトルも抜群だが中味もなかなか面白い。毛嫌いせずに、この一冊だけはお読みになってみてもいいかもしれない。短編だし時間も取らない。若き日の大江健三郎が確かに才能のある小説家だったことが分かる。