他人の顔 (新潮文庫)

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他人の顔 (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 500 円 / 1 円 より
発売日: (1968-12) アマゾン売上ランキング: 96873 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 9件

人間の象徴としての顔
作者の代表作の一つ。顔のキズが原因の一つとなって、妻の真情を疑う夫が仮面を作って"他人として"妻の襲撃計画を立て、妻の真意を確かめようとする話。

発表当時は作品の構成に大分批判が集まったようだ。襲撃実行前の、仮面製作等の準備の描写が全体の5/6程を占め、実際の夫と妻の対決が一瞬で終ってしまう。だが、私はこれは作者の計算通りだと思う。夫が執拗な程に仮面作成に没頭する姿、あるいは計画を綿密に練る姿に怨念のようなものを感じ、読者を物語に引き込む。そして、仮面が象徴する"顔"が人間にとって何を意味するかを読者にも考えさせる。そして、最後に待っているドンデン返しの皮肉。

人間の表面的な象徴と言える"顔"の考察と共に、男と女の間に存在する心の闇を映し出した秀作。
この男にとって「顔」とは何だったのか・・・
事故で顔に傷を負ってしまった男が、やがて顔のないことが妻とのちょっとしたつまずきの原因ではないかと疑い始める。そして、男は妄想の森に入り込んでいく。なまじ専門知識と「材料」が近くにあっただけに、その走った道は破滅の深淵へと通じていた。
理系小説といわれるだけあって、仮面の制作過程はリアルである。全編心理描写であるが、とりわけ試しに街に出てみるうち、仮面が自我を発揮し始めるあたりは秀逸である。
どんでん返しが用意されている。ここで妄想の末路とはいえ、男の馬鹿さ加減が痛罵される。化けの皮が剥がされ、叩きのめされる。痛快さを覚えるのは私だけか・・・。ただ、男のとった行動は・・・。
考えてみると、男は会社では全く普通に勤め上げていた。つまり、男は「包帯男」としての「顔」を既に持っていたのだ。

人間にとって顔とは何か?見えない心の化身なのだろうか?     顔を失うことで心も失い、それらの喪失感を妻の愛で補充しようとする男を通じ、我々に生理的崩壊を訴えかける「他人の顔」。 

自分以外の顔に依拠することで重層的な「自分」を造り上げ、心にまで仮面を被せることで、すべてが仮になってしまった男の心情を内側から抉り出す描写によって、結局は、男の「顔」を知っている我々の目には「仮の顔」の裏を読みとくので、裏が表に見える滑稽な悲劇になってしまう。常に裏と表が錯綜する本編を自分の目で確かめてはいかがでしょうか。

内省から妄想、そして破綻へ
 仮面を作り上げるに至る工程とその試行錯誤の描写は非常に細かく、リアルに感じられる。試行錯誤で仮面が完成し、一人二役を演じきれるようになるように努力するあたりでは、ぐっと主人公にのめり込んでしまう。その分、最後のどんでん返しは衝撃的だ。

 顔を失うことで自我を失ない、妄想的になったとはいえ、妻の手紙を読んだ後の行動は完全に破綻していると言える。
 「顔」という一つのアイデンティティの崩壊により、優秀な人間が内省を重ねていくに従って、妄想にとらわれて破綻していく様は、日本的なエリート層のもろさを表しているようでもある。





表現の手段であり、感情を読み取る手がかり。
生身の顔は、一人に一つしか、持つことを許されない。
主人公は、顔について綿密に考察し、人口の顔を得るために積極的な行動を起こした。
彼は手に入れることができるのか。
彼は取り戻すことができるのか。

緻密な描写でいざなう、「顔小説」の決定版!

読み終えた瞬間、あなたの目から鱗が落ちます。