真理先生 (新潮文庫)

- 新潮社 価格 ¥ 500
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真理先生 (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 500 円 / 1 円 より
発売日: (1952-06) アマゾン売上ランキング: 80331 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 5件

一番好きな小説
「まりせんせい」ではなく「しんりせんせい」と読みます。しかも男の先生です。

『友情』を読んで武者小路実篤ワールドにはまった私は本屋さんでふと手にしたこの小説を何の気なしに買ってみたのですが、『友情』以上に厚い『人情』の物語です。

今出ている小説って人間の悪い部分、特に自分の中の暗闇みたいなのを扱ったものが多いような気がします。感情移入はできますが、読んだあと暗くなります。でもこの小説の中では、金はないのに人徳がある真理先生を中心に、物語には「いいひと」しか出てこないんです。多分そんな小説他にないんじゃないかってくらい。私はこの小説を読んだ後、すごく「日本人」を感じました。そう、そのほがらかさ、人を信じる心、自然を愛する心・・・。なんというか今の世の中から消えつつあるけど確かに残っている日本人のやさしさというものをすごく感じたんです。読んだあと、あまりのうれしさに、空を見上げて「日本人でよかった」としみじみ思いました。

小説としては一番とはいえないかもしれませんが、でも私が「好き」な小説の中では一番です。
人生の指針
この話に登場する人は善人ばかりです。
皆、理想を抱いており、それに向かって努力することを惜しまない人です。
彼らのように生きることができれば、どんなに幸せだろうかと思いました。
自分の価値を自分で見出そうとする姿勢、決して自己満足に終わらない向上心は見習うべきものがあると思いました。

善人ばかりが登場するからと言って、嫌味なところがあるわけでもありません。
理想を描きすぎてわざとらしいとも思いませんでした。
読んでいて、気持ちが良い作品です。ぜひ読んでみて下さい。
心を美しくしてくれる作品
真理先生を読んだあと武者小路実篤さんの他の作品も一気に読みみました。それほど魅力的な真理先生とは、堅苦しく真理を説く人ではなくご自身が真理そのもの。黙っているだけで周りに人が自然と寄ってくるような暖かさに満ち溢れた人です。

こんな魅力的な人に実際にお目にかかったことはありませんが、すべての人間が自分のことばかり考えるのはやめきれいな気持ちで毎日を生きていけばどこにでも真理先生のような方がみつかるようになるかもしれません。真理を体現するためには何も難しい能書きは必要ない、真理先生のように自然体で心穏やかに生きていけばよいのだ、ということを教えてもらいました。

心の闇や人間の汚い部分を描くのも真理には違いありませんが、ときにはこのようにどこまでも美しい小説があってもよいと思います。
人間
人間は生まれたときから人間である。
では、人間とは何なのか。他の動物と違うところは何なのか。
それは「心」であると思う。
その心。即ち、人間が人間として生きる、人間らしく生きる。
それがこの真理先生という作品には詰まっていると思います。
そして、その中に非常によいきっと日本人しかわからないであろう、言い回しや、古きよき時代の豊かな言葉。
これがなんとも、さらに感動を呼び寄せる。

皆が人間らしく、心豊かに、教養高く生きる。
これが今の現代には足りないのかもしれない。

武者小路ワールド
この小説には悪人は登場しません。善人ばかりが描かれています(奇人はいますが)。そして真理先生は真理こそが自分も他人も幸福に導くと説きます。
人間や社会の陰や醜い部分は、小説に限らず多くのメディアによって訴えられています。それに慣らされすぎている現代人にはきっと一服の清涼剤となるでしょう。

登場人物たちの現実的な生活力は疑問ですが、ここまで人間の善意を信じられたら、その時点で幸せになれたも同然です。

性善説を思わせる人生肯定の世界、武者小路実篤の魅力が如何なく発揮されています。