春の雪 (新潮文庫―豊饒の海)

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春の雪 (新潮文庫―豊饒の海)


新潮社

価格(new/used): 660 円 / 1 円 より
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 54件

三島の描いた最大の騙し絵
 修飾過多とも言える美麗な日本語と、卓越した文章表現力で日本の文壇の中でも異彩を放っている三島由紀夫。 そんな彼の最後にして最大の作品(だと私は思う)であるこの『豊饒の海』シリーズ。
 
 『浜松中納言』物語をモチーフとし、ウロボロス的な構造を持つこのシリーズの最大の特徴は、一旦、最終巻にあたる『天人五衰』まで読み終わると、読者自身の認識がコペルニクス的回転を起こし、2週目からは、全く違った物語として読み進めることができるという点にある。

 『春の雪』はその「起」に当たり、4作品の中で最も独立した作品である。作品の主題も恋愛であるため、感情移入しやすく、読みやすい構成となっている。

 ロマンティックで感傷的で、物悲しい。そんな雰囲気に三島の文体がさらなる情緒を加えてくれる。他の作家のラブシーンにも等しいと三島本人が豪語していた仔細な風景描写も、ロココ調とでもいうべき形容詞と形容動詞を最大限利用している修飾過多な文章も、それでいて論理的で主述の関係が崩れないのもさすが三島の文章と言いたくなるほどである。

 現代文学においては古臭い主題である「恋愛」を巡る物語である『春の雪』だが、読者はのんびりと構えていてはいけないし、さっさと読み飛ばしてはいけない作品なのである。この『春の雪』は三島が散りばめた伏線と罠に満ちている。ここで伏線と罠に気付かずに過ぎてしまっては最後の最後で筆者が残した落とし穴にまんまと落ちてしまう。

 『豊饒の海』。三島の描いた最大の騙し絵の秘密。それを解き明かすことが私の最大の楽しみなのである。
美しい文体
心情をここまで的確、繊細に活字で表現できるものか。初めて三島文学に触れた作品で、以降読み漁ることになった。当初コレでもかという比喩表現いささかクドさを感じたが、徐々にそれが快感になってくるといったら大袈裟か。

4部作で構成され、輪廻転生が基軸になり『春の雪』はその伏線。映画化されているように独立して読むも可。恋愛に閉鎖的な華族社会に生きる青い炎のような清顕が、幼く女々しい自虐的な切ない恋に燃える。
おもしろいです
4部作の内、第一巻「春の雪」だけしか読んでいませんが、
とにかく第二巻以降が早く読みたくて我慢ができない、そんな内容です。
聡子の美しさを自分の心に強く強く貫入させながら酔ったように読み進みました。
それだけでも充分に堪能できるのに加えて、構成の周到さ、描写の重厚さがたまりません。
ただ唯識論に触れる部分だけはやや難解で興醒めさせられるので、
全四巻でひとつの世界が見事に完成するのだと、そう予感しての星5つです。

「あんまり好きだから、仕合せを通り過ぎてしまったのだ」
中盤になって主人公の清顕と聡子が結ばれたところから面白くなりはじめ、場面場面が耽美的かつ豪華で圧倒されました。どんな些細なところでも、美しいことが、すごいと思います。悲恋なのでよけいきらきら輝いていて感じるのかもしれません。うー悲しいよう。
映画にもなっています。観たらぼろぼろ泣いちゃうかな。
第二部以降に期待
「春の雪」は全四部からなる大作、「豊饒の海」の第一部であり、
本来なら第4部までをまとめて評価すべきだと思う。
あえて「春の雪」のみで判定するなら、★★★★だろうか?
ストーリー自体は比較的シンプルで、その割りにページ数が多く、
感傷的、情緒的な描写が長かったりするせいもあると思うのだが、
人によってはこの美しい日本語に心酔するのだろうが、
主人公に共感しづらい面もあって、私は正直言って少し冗長に感じてしまった。
しかし清顕が理想の女性像として崇拝する春日宮妃についての描写の美しさには、私も思わず唸ってしまった。
本多が「歴史に関わる意志」についての思想を力説する場面や仏教思想をめぐって清顕らと議論する所などは、ドストエフスキーの大作を彷彿させるものがあり、第二部以降の展開を期待させる。