ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささ...

- 新潮社 価格 ¥ 540
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ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 540 円 / 48 円 より
発売日: (1997-09) アマゾン売上ランキング: 8171 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 72件

現代日本文学の至宝
期待感のない小説だ。ノーベル賞をとっても驚きはしないからだ。また読みおえた人を不幸にする小説だ。これよりよいものにめぐりあうことは今後そうないと思えるからだ。それ以外けなしようがないほどの大傑作。これ一冊で村上春樹の偉大さが十分わかる。

奇妙な鳥の声に気づくと間もなく愛猫が姿を消す。主人公岡田トオルの平凡な日常は徐々に変貌し、ついに妻クミコまで謎の失踪をとげる。何かが狂ってしまったなら、もとに戻すしかない。ねじまき鳥の声が止まると、岡田トオルの静かな戦いが始まった。行く手を阻むは綿谷ノボルほかに象徴される悪。時空をこえ世界を支配する強大な敵だ。普通人、岡田トオルは、はたして勝てるか。だが魂の彷徨を続けるなか、彼は様々な人々にめぐりあい、学び、力をつけていく。登場人物、エピソードはそれぞれが深い洞察に満ちたメタファーだ。複雑なこの世のすべてが記されているといっていい。さまざまに読みとけるだろうし、それ自体また楽しい。この本の魅力を語るだけで分厚い本が書けるだろうし、事実、出版されている。

一見シュールで難解だが、愛するものを奪還すべく悪と戦うシンプルさが核。古典的で普遍的なテーマを追求した清々しい物語だ。多くの読者をひきつけてやまないゆえんだろう。意味不明だがとにかくこの話が好きという人が多いのは、頭ではなく魂で読む優れた読者をそれだけとりこにしているあかしだ。

物語同様、簡潔な文章は、澄明で流麗。だから読みやすい。これからもより多くの人に愛されることを願う。
構成力の弱さ
日常の中に潜む些細な出来事が実は深い意味を持っている。その意味に気づくことは幸せなのだろうか?運命付けられているかのように受け入れるしかないいくつかの出来事。 透明な悪意に満ちた世界にパステル調の色彩のヴェールで紗をかける。そして人の心の奥底にそっとメスを入れる。独自の世界観を大上段に構えるわけではなく、静かに語りかけるように説き続ける筆者。
今、村上春樹を語る時に使われている此れらの修辞は、良きに付け悪しきに付けこの作品にこそ相応しいと思う。
しかし、いかんせん構成、展開ともに凡庸で最後まで読み通した充実感が無い。部分的には印象的なエピソードが多いだけに、はっきり言って途中で読むのを止めても読後感は大差無いかもしれない。
蛇足になるが、主人公がひたすらカタカナフードを飲み食いしているだけといった印象が残る。
設定もストーリーも重要ではない不思議な作品
わたしは普段はSF小説以外の小説はほとんど読まない‥のだが、突然、村上春樹を一作品くらい読んでおこうかと思い立った。理由はいくつかあるのだが余り意味がないので省略。

どの作品にしようかと思ったが、迷った末に村上作品が初めて戦争を扱ったという本書にしてみた。

SF小説の場合は重要なのは設定とストーリーになる。どんな世界で、どのような事件が起こり、そしてそれが如何に解決されていくかが重要だ。逆に言えば、そこを要約してしまうと、その作品が魅力的かどうかそれなりに見当が付く。

ところが、本書ではそういった部分にはあまり意味がない。本書の主人公は奥さんと二人暮らしで、司法浪人しながら法律事務所で働いていたらしいが先日退職して今は雇用保険をもらいながら主夫業をしている。結婚直後から飼っていたネコが行方不明になってしまったので、働いている奥さんの代わりに家事の合間に探す努力もしている。

というのが設定であり、スタート時点のストーリーということになる。

そのストーリーの中で主人公たちと関わる人たちが紹介され、その人々が自分の身の上を語っていく。それなりに面白いエピソードもあり、すいすいと読ませてくれる。しかし、肝心のネコが見つかる気配はなく、ストーリーが進展したと感じさせる部分は第一部の範囲ではほとんどない。最後の方で登場するノモンハン戦のエピソードを語る人物の部分が「戦争を扱った」ということだとすれば、これはまた随分と意外な形での扱い方であった。
不可解だが魅力的
井戸や壁抜けに象徴される、無意識の方向に主人公がどんどん向っていくので、私はこの主人公が「本当に」「今」生きているのか、はらはらしながら読んでいた。意識が無意識にむかっていくと、人間は生きているのか死んでいるのかわからないような状態になる。井戸を掘るまではいいが、壁を抜けてしまうのはそういう意味でとても怖いことだ。戻ってこれないことだってあるから。こちら側とあちら側は、紙一重で違う世界なのだ。第三章で最後、笠原メイに会うという設定がなければ、私はこの主人公が最後までこちら側に戻ることができたか不安なままであったと思う。最後を読んで安心した。
日常生活って、現実的にはなにがあるということでもないのだが、ふとしたことで変化していくものだ。夫婦関係も、人生もだ。そういった「ふとしたこと」の中に潜む不可解さや深淵を書かせたら、やはり村上春樹の横に出るひとはいないかもしれない。さすがに読後は疲労感も感じたが良い作品である。
村上さんの最高傑作
あまりに小説的に巧みな村上春樹氏の計算された書き方は、どうもいろいろな読み方を、読み手側の視点に応じて許容するようだ。本書、戦後の日本社会全体に潜む問題を扱っているようにも読めるし、また純粋に個人の意識の問題をメッセージにしているようにも見える。非常に巧みな計算された書き方ができる、村上氏ならではの表現だ。
また、村上春樹氏の言葉の扱い方は、丁寧に巧みで美しく、そのタッチは、まさにすばらしい音楽を聴いているような錯覚すら思わせる。海外の、特にアメリカ文学から、引き出してきた特徴的な表現が、さらに独自の形で展開されていく。
本作品は、ばらばらに完成されてきたパーツがまとまりながら、3部作として完成したという、異例の流れでできた。国境の・・も、ねじまき鳥との関連で書いた作品だという。
今後、これを越える作品を村上さんが書けるのか、まったく違う主題に行くのかどうするのか。。ファンとしては期待し続けたいと思う。