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古都 (新潮文庫) |
| - 新潮社 価格 ¥ 420 | |
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古都 (新潮文庫)新潮社 価格(new/used): 420 円 / 1 円 より 発売日: (1968-08) アマゾン売上ランキング: 28292 位 文庫 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 13件 淡く白い風景の物語双子で生まれ同じ家庭で個性を磨きながらそれぞれの人生を歩むのが本来とするならば、この姉妹は全く違う人生を生まれた時から辿らなければならなかった。その事実を知った時、二人の運命を分けた見えざるものに対して畏怖し、渦が中心へと二人を近づける自然の力に身を任す。しかし、姉妹は一体にはなれぬことを知り、また離れていく運命に人生の切なさ、哀しさを胸に抱き、それぞれの人生へ旅立つ。一瞬ではあるが凝縮された時間の密度の中で絆を強固に築き上げた。雪の中へ消え去る苗子、それを見送る千重子、まるで幻影かであったような静かな白い風景が深い余韻を私の中に残す。人生は何を持って幸せと定めるのか・・ 日本的美の極致本作品は、京都の春夏秋冬と移ろいゆく季節を背景に、捨子でありながら佐田太吉郎としげに拾われ、呉服問屋の一人娘として育てられた千重子と、姉か妹かは不明だが、千重子の双子であり、北山杉の村で働く苗子が祇園祭の夜に再会し、互いに惹かれゆくさまを描いた、極めて日本的な情緒に満ち溢れた美しい作品である。 双子であるのに、別々の道を歩み生きつづけてゆく二人。千重子に、一緒に家に住むことを提案されても、ただ一度泊まりに行くだけで、あとは拒絶する苗子。あまりに風情を帯びた背景の描写の中に、二人の運命というものが自然に書き連ねられる。千重子に心がありつつも、その幻影として苗子に結婚を申し込む秀男の心理もまた趣深い。雷の場面で千重子の上に重なり合う苗子、さらに再開の場面で今度は逆に苗子に重なり合う千重子、といった描写も冒頭のすみれの描写と照応して感得し得る。 とは言いつつ、この作品には、千重子や苗子を通して、物語における教訓めいたものが主題として描かれている訳ではなく、ただ背景の京都の年中行事と自然の描写がかくも美しく、そこに生きる人々の人間模様が写実されているのである。つまり、本作においては、人の背景に自然があるのではなく、自然の中に人が生きている、という描写が為されているのだと私は思う。川端の書く日本語の行間を活かした奥ゆかしさに、純粋に読者は酔わされる。作品を通して思想的に何かを訴えかけられるわけでもなく、ただ純粋に日本的な四季の美、そして人情の美というものを、本作を通じて読者は得られる。 兎にも角にも、日本の美を最も忠実に表せるのは川端康成だと私は思う。川端は、睡眠薬を服用していた為に、本作を書いていた記憶がないということが驚きだが、いずれにせよ、この上なく品高い、本来的な日本の美を再認識出来るこの美しい一作は、現代の欧米化が促進された似非日本に住まう日本人にこそ、多く読まれるべきであると思う。 自分にとっての美しさを創造しよう今となっては残っているのかどうかわからないが、かつてはこのような美しい「日本」が実在したのかもしれない。 今は町に原色の看板があふれ、町並みを考えないグロテスクな建築が増え、人々の心もグローバライゼーションの競争の渦の中で消耗し、自分さえ良ければという狭量な考え方をする人たちが徐々に増えてきているように思う。 でも、やはり、物事の美しさは心の中にいつくしみ育てることが出来るのだと信じたい。 「古都」のような文学にたしなむのもその手段の一つだろう。 でも、もしかしたら川端康成がこの小説を書いたときは既に美しい日本が崩れていて、その悲しさからこうした作品を生み出そうとしたのかもしれない。 となると、ますます今の状況に嘆くばかりではなく、自分自身で美しさというものを生み出していくだけの貢献を何かの形で実践したいという気にもなるのである。 京都で読んだけど京都出張の合間に読んでみたよ。 老舗の生地問屋、帯職人、ゲイシャにマイコにお茶屋の女将などなど古式豊かな職業人が登場したり、葵祭りが重要なイベントだったりして、古都の情緒・美しい光景と四季を描き出そうとする意図が鮮明である。しかし、「京都を美しく描こう」という著者の思惑があまりに前面に出すぎていて面食らう。何度か行くと分かるが、実際の京都はここまで美しい街ではないし、もっとぎらぎらした面がある。登場人物としては、主人公の千重子を育てている父母が典型的であるが、恬淡としたいい人すぎてまるで味がない。 美しい人でも街でも音楽でも、何でもよいのだが、何かの美しさを描こうと思ったらその裏に隠されている何かぎらぎらしたものも一緒に描かないと魅力がない。たとえば、「きれいな女優」と「惹かれる女優」の違いはそこにあるのではないか。 ただの Good Old City=京都 なんていうのはガイドブックの中だけで十分である。 川端先生、ちょっと晩年の作品で気合が十分でなかったか。 何度も読み返したくなる川端康成氏による、京都とその四季の行事を舞台とした双子姉妹の物語。 双子に生まれながらも生い立ちが異なる千重子と苗子。 かたや京呉服問屋の娘、かたや北山杉の村の娘。 二十歳になった二人は偶然に出会い、双子であることを知る。 そして千重子に想いを拒まれた秀男は、同じ顔を持つ苗子にその幻を見たのか。 本作については「四季の移ろいと共に京の行事を描いた絵巻物語」と評され、 登場人物が繰り広げるドラマそのものについてより多くの言葉を割いた論評が多い。 確かに京都における四季折々の行事が詳細に事細かに美しく描かれている。 それらはもちろん今さら言うまでも無く素晴らしい。 しかし本作の読みどころとして、私は人間劇そのものに強く惹かれた。 双子の姉妹の生い立ち、再会、家族、姉妹という繋がり、当時のしきたり、そして一人の男。 しかし物語は決して嵐の展開を見せることはない。 あくまでも家族や姉妹への思いやること、その範囲内でそれぞれが最良だと思う選択をすること。 それぞれの思いやりが、温もりを帯びた静かな台詞と共に溢れ出すのを感じる。 さらにその際の京の言葉遣いが、なんとも言えない落ち着きと温かみを醸し出し、より一層我々読者を魅了する。 また、時折垣間見える、姉妹を越えた女としてのプライドもアクセントとして見逃せない。 何度でも読み返したくなる素晴らしい小説。 |