掌の小説 (新潮文庫)

- 新潮社 価格 ¥ 740
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掌の小説 (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 740 円 / 125 円 より
発売日: (1971-03) アマゾン売上ランキング: 28612 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 7件

少女の官能的美の珠玉
掌編と短編の異なる点は、掌編がより短いという事だけではない。
掌編はそれ自体で起承転結を盛り込み、完結させなければならないので、一字一句たりとも「遊ぶ」余裕が無い。
この作品集は、収録作品数が多く、一字一句の無駄もなく、たゆまない美を追究する、著者の世界観が凝縮されている。

本書のエッセンスとして、著者の「舞姫」が持つリアリズム、「みずうみ」が持つ少女の官能的美、に通じるものを感じる。
特に、著者が追求する美の一つに、少女の処女性に対する美があるが、本書には「みずうみ」に近い作品が、いくつかある。
その印象は、清らかで純粋というよりも、対象が少女であるにもかかわらず、官能的なのだ。
特に、「雨傘」の完成度の高さは、文学的意味でも、特筆すべきだ。

これだけ多くの掌編を読むと、著者が描こうとしている世界が、薄皮を剥ぐが如く、段々と見えてくる。
本書を友としながら、著者の「眠れる美女」を読むと、より深く楽しむ事が出来ると思う。

本作品集は、著者の最高傑作の一つである事は確かだ。
最高の詩集
三島由紀夫が「川端さんの詩集」と評したが、至言であろう。
美しい日本語の文体とはこう云う作品を指すのだと思う。どんなに動きのある描写であっても、川端作品の根底には常に゛静寂゛が流れている。本作の「河童事件」などは典型的な例だ。
その他にも「月」「しぐれ」「反橋」「夏の靴」「有難う」など川端の詩精神が高度に結晶した佳品揃い。(この作品には傑作と云う表現は重々しくて使いたくない)
この偉大なノーベル賞作家の全作品中、いの一番に読んで欲しい一冊。
お薦めです!
登場人物の描写(特に女性)が良かった。川端康成の小説に登場する女性は皆さん幸せ者だなと思いました。こんな風に見つめられると嬉しいものです。いい意味でのエロさを持ちつつ、丁寧に人間(自分自身も含め)を見るという事はいい作家共通の性質なのでしょうか。いやぁ〜いいエロさだったなぁと一話読み終える毎に思わせてくれる小説でした。(官能小説ではありません)
これから読む方、どの話から読んでも楽しめます。それぞれの題名も見所です。
小説と散文詩
 この短編(というか 掌編)小説集を読んでいると 川端の才能の多彩さに唸ってしまうしかない。百編以上の作品が 各々独自な作風で煌めいている。こんな作品集は 空前であり 絶後であるとも言える。

 川端は ある時期に 詩を書きたいが書けず その代わりに掌編小説を書き散らしたという言い方をしている。そう言われると 散文詩の趣もないわけではない。但し 例えば三好達治あたりの散文詩と比較すると もう 全く違った世界である。三好が書いているものは 長くても確かに詩である一方 川端が書いたものは 短くても どうしようもなく小説である。その意味で本作は小説と散文詩の違いを際立たせるという点でも ユニークな作品であると思う。

 

すごいです、これ。
いわゆるショートショートというヤツですが、短いからとあなどってはいけません。わずか2ページの中にさえ、長編小説にも劣らない感動と充実が凝縮されています。川端康成という作家の凄さ、文学の可能性というものさえ感じさせる作品集です。
また、 康成の作品は性的な描写が無いのに、どこかになまなましさ、体温があり、それが余計にイヤらしいぞ、と(よい意味で)感じさせるのですが、この本でもそんな康成ワールドが炸裂してます。
『有難う』の、一夜を過ごした朝、相手の男が座る運転手台の黒い革を撫でている娘。『雨傘』の少女の羽織に触れた少年の指に伝わる体温。などなど、必読です。