ピアニシモ (集英社文庫)

- 集英社 価格 ¥ 340
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ピアニシモ (集英社文庫)


集英社

価格(new/used): 340 円 / 0 円 より
発売日: (1992-05) アマゾン売上ランキング: 241494 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 3.0 / 総数: 5件

まずは著者の他の本を先に読んでからこの本を。
☆2.5個

辻仁成の多才さは素直に認めるし好きな作家の一人ではあるが、彼が他の著作で見せている非凡な表現力をこの本の中に期待すると裏切られてしまう。

この本は辻仁成の処女作という点に価値があるのであり、中身そのものについては高い評価を得られるような内容ではないと思う。

ただ、著者の創作に対するエネルギーとそしてダイヤモンドの原石のような素質を感じることのできる作品である。

辻仁成の本をあまり読んだことのない人には、この本で彼を評価して欲しくないので、まずは他の作品から始めることをお薦めしたい。

そしてもし彼の作品が好きだと思ったら、その時にこの本も読んでみてください。
一気に読んでしまいました。
主人公の透は、転校を繰り返すうちに、自分の心に殻を作り、閉じこもってしまう。
次第にその殻は厚くなり、自分はずっと殻のなかに閉じこもっている。
その方が楽なんだと思う。
転校するごとに友達を作ろうと努力し、それが達成されないうちにまた次の学校へ。
転校は当然ながら親の意向であり、子供にはどうすることもできない。
だったら、自分は無駄な努力をするより、何もしない方が楽でいい。
親にも無意味な反抗はせず、とにかく閉じこもっている方が楽でいい。

ストーリー終盤で、いくつかの事柄の積み重ねでこの殻が崩壊していき、
透本人が自分は成長しないといけないことに気づくまでの流れは、読んでてぞくっとした。
表現もさることながら、自分も共鳴できる部分が多かったから。
既視感が否めない
 孤独な少年が鬱屈した思いを解放するために創り出した誰にも見えない存在「ヒカル」…。序盤早々にこの設定が明らかにされた時点で、「体がぶつかって中身(魂)が入れ替わる」のと同じくらいありきたりな筋に大きく落胆させられた。「何番煎じだよ」と呟きたくなる。

 また、「ヒカル」を厳しく薄汚れた現実を吹き飛ばすべき自由・奔放な存在として描こうとしているのはわかるが、それを具体的な言動・行動に落とす作業に失敗していると感じざるをえない。単なる落ち着きのない精神的に未成熟な「こども」のそれでしかなく、むしろ幼稚というべきである。

 以上、自分でも非常に辛辣なことを書いたと思うが、決して著者の他の作品まで貶しているわけではないので悪しからず。

微妙
「ピアニッシモ」と「海峡の光」を読んで、それから辻仁成を読まなくなった。
そういう点では特別の思いのある本だけれど、やや暴力的、破壊的な内容から
得られるものが少なかったというのが感想。あくまでも個人的な意見ですけど。
ありゃりゃ?
読んだのは実に中学以来です。当時を越える衝撃を受けたと言っても言い過ぎではありません。主人公トオルは、孤独な少年です。トオルにとって、父は「あの人」母は「あんた」でしかなく、新しく転入した学校でもクラスの生徒、教師たちは運命を受け入れて無表情。

なぜこんなにも人間社会は住みにくいのか?なぜみんな自分を殺して無表情に生きているのだ?誰でも子供の頃に抱いた感情でしょう。そんな社会をトオル(ひと時の私たち)は冷ややかに見つめています。

ヒカルという子供じみた偶像と同居し、押し隠した本音(社会に対するアンチテーゼ)を彼に語らせることで「人と分かり合えない自分(なんで自分はこんなに自信がないのか)と「好き勝手やりたい自分(社会に従順でありたくない)」が乖離してしまう恐れを昇華したのではないでしょうか。

最終的に(ネタばれでもあるのですが)「現実」にイヤでも向き合わざるを得ないことに気づき、徐々に、そして一気に大人へと成長するトオル(いささか当たり前すぎる感じですか?)を目の当たりにして、何か思い出すものがあるはずですよ。ああ、こんなに正義感に、違和感に溢れてた時があったんだよなぁ…と。

さて。他には、とても印象的で鮮明な情景描写も個性的です。文章の美麗さが物語を引き立てている、珍しい作品ですね。少なくとも情景描写がくど過ぎず、目に付かない。

星5つ。涙はしませんが、星5つ。特1にヒカルを消し去る瞬間は、圧巻(であってほしい…)ですよ。