ジャージの二人 (集英社文庫 な 44-...

- 集英社 価格 ¥ 450
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ジャージの二人 (集英社文庫 な 44-1)


集英社

価格(new/used): 450 円 / 118 円 より
発売日: (2007-01) アマゾン売上ランキング: 2228 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 4件

巧みな文章で綴られる、少々切ない物語
軽井沢の別荘(といっても、そんなたいしたものではない)における、30歳くらいの息子と父親、それとプラス一人(その際は「ジャージの3人」となる)とのゆるいジャージ生活を描いた作品。
父親と息子、旦那と嫁、息子と娘など、いろいろな人間関係が交差して、物語を作り出している。

小説として面白いか、というとちょっと微妙ではあるが、風景や心理の描写はなかなか巧みで、笑わされたり、ちょっと心を揺さぶられたり、の連続だ。

著者の別名である「ブルボン小林」名義でのエッセイが好きなので本書も読んでみたのだが、エッセイ同様特筆すべきは、「固有名詞の使い方の巧みさ」だと思う。
本書の柱的に使われる「和小学校」を始め、たまに出てくる実在する商品名(ミロとか、アルフォートとか)が、作品を引き締めている感じだ。
もっとも、これは世代が違うなどで通じない人には通じないだろうから、諸刃の剣ではあるだろうが・・・。
切ない一品
登場人物のモデルと思われる人物を三人とも知っている身からすると「ジャージの三人」はどうしても普通の小説として読むことができず、自分の中で感情移入のゲージを割り引くのに苦労する。作者に近しい人であれば誰でもそうなのだろうが、私もまた例外ではない。レタス畑のくだりと最後の場面では不覚にも泣きそうになった。切ない一品。

この作者のスタイルは柴崎友香の解説にもあるとおりで「描写される対象物が単なる小道具でなく作者視点での登場人物が関心を持つ対象として語られる」のが大きな特徴だが、「ジャージの二人」「ジャージの三人」にも色濃く表れる。ジャイアントカプリコや熊手やイル・ポスティーノなど、主人公の関心につれ淡々と綴られるさまは胸に心地よい。

作者はどっかの対談で「得意分野がないので仕方なく純文学にした」みたいなことを言っていたが、純文学でもう十分得意分野になってるし周りの評価も固まってきた。だがそんな評価はどこ吹く風でマイペースに新作を綴っていただければと。
ゆる〜い時間
失業中で小説家を目指す息子が
写真家の父とひと夏を過ごすために別荘へやってきた。
二人とも現在の結婚生活がうまくいっておらず
現実から逃避するような意味合いもこめて
毎年来ている別荘へやってきた。
そこで二人は何をするでもなく
ノンビリと、もしくはだらしなく夏を過ごしていく。

息子の胸中には不倫をした妻への
怒りとも何ともつかない思いが渦巻いている。
父も現在の妻との間がどうも冷え切っているようで
他人との接触を断ちながら
それでも何らかの接触を保ち続けたいと願っているような
そんな二人の日々が淡々と描かれている。

なんとなくゆる〜い持間が流れていて
読んでいてなんだかこちらもゆる〜くなってしまうような
不思議な感覚を抱いた。

「ジャージの三人」では
次の年の夏の別荘での話。
はじめは息子と父と息子の妻と。
後半は息子と父とその娘の三人。
ここでもゆる〜い時間が流れていて
居心地悪い、でも逆にほっとできるような
そんな時間が流れているようで
こちらもわりと面白く読めた。

分かり合うってどういうことだろう
都会生活と夏の暑さから逃れるため、北軽井沢の別荘へドロップアウトした父子のスローライフを描いた作品。
この作品に登場する、父子は互いの夫婦仲が上手くいってなくて、人間関係に疲れてしまっている。
生きていくうえで避けることはできない人との関わりだけど、どんなにがんばっても、万事良好ということにもできない。だから面倒だとか鬱陶しくなって気疲れしてしまうのだけれど、親子であってもそうなのだから、突き詰めれば他人の夫婦なら、なお分かり合えくて当然であるのかもしれない。でも、そんな少しの可能性だから、分かり合えたときには奇跡のようにうれしく思えるのだろうか。
この作品は、淡々とした別荘地での生活を描きながら、人と人とのつながりをゆっくりと描き出してゆく作品である。
なお、本作には、表題作のほか、その次の年に再び軽井沢を訪れるもようを描いた「ジャージの三人」が併録されている。