茄子 (1) (アフタヌーンKC (27...

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茄子 (1) (アフタヌーンKC (272))


講談社

価格(new/used): -- 円 / 600 円 より
発売日: (2001-07) アマゾン売上ランキング: -- 位
コミック / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 13件

茄子の味
「味」とは、
食べ物がもつ才能なのか。
それとも
食した者が見つけ出す宝物なのか。
茄子の「味」。
このマンガには「味」がある。あらゆる場所に散りばめられている。
そして読者は試されているのだ。
宝探しの才能を。
味覚は誰もに平等に。でもどんな「味」かは百人百色。
どうぞご賞味あれ。
生活感あふれる
最近の少年漫画を読み慣れてるとこの人の絵は一見すると大したことない、むしろかなりヘタクソに見えるんじゃないかと思います。実際、絵も話も大したことねえんじゃねえ?と思って途中まで読んでましたが、おっさんが鶏の塩パン包みを食うシーンでただならぬものを感じました。本当にめちゃくちゃうまそうに食べるんですよ。宮崎さんのアニメで登場人物が物を食べるシーンに通ずるものを感じました。飯食うにしろ、煙草吸うにしろ、自転車こぐにしろ、登場人物のなにげないしぐさ、動作、言動に生活感があふれていて凄く現実味を感じます。本当に人物が絵の中で生きてます。
最後の一コマ最高です。高校生のときにこの一コマに出会いたかったです。
その〈ジャンル性〉から観てみる
 内容の詳細、その面白さの喧伝については、他のレビュアーにゆだねる。以下では内容の形式〈ジャンル性〉を見つめてみたい。
 この漫画の中で、茄子とは欲望の寓意だろう。欲望とはそれ自体価値はないけれど、周りの人が価値があると信じるものに対して生じる(ダイヤモンド ! )。そう考えると作中の説明では、ナスは栄養もなく、栽培に手がかかり、味もない(1巻「3人」「空中菜園」から)。つまり使用価値が低い。けれど、江戸の昔から人に求められ、「早もの」は市場で高く取り引きされた(2巻「東都早もの喰」から)。つまり交換価値が高いのだ。茄子という地味な作物に相応しからぬ像である。
 ところで、この作品群は茄子を求める物語ではなく、茄子の周りを巡ることでそれを相対化する物語だ。そういった意味で、たしかにバブル以降の物語かもしれない。しかし、バブル批判に重点をみるべきではないだろう。
 バブルがなんであれ、それが人の行ったことであれば、この作品群だって人が行うところを描いている。人間が欲望の動物であるとし、その欲望に忠実なさまを線少なく描けばロマンになるし、線を増やせばリアルになる。一方で、人間は欲望に醒めた動物もしくは自覚しつつ欲望する動物であるとし、そのようなさまを描いたならば作品はアイロニーになる。重要なのはアイロニーが皮肉だけでなく、笑いと哀しみを含んでいることだ。
 『茄子』はユーモアとペーソスを淡々と描く。

 とはいえ、あえて批判を書くと、笑いと悲しみの描き方が優等生的であること。ただし、これはジャンル論に由来する問題かもしれないけれど。

世の捨て方あれこれ
アニメになった「アンダルシアの夏」の原作が読みたくて買って満足。アニメではわからなかったギャグ(選手の一人がカステラアンコという名前だったりとか)や茄子の浅塩漬けだと信じて疑わなかった料理が「茄子のアサディージョ漬け」という凝った料理であった。発見もいっぱい。

ストーリーの柱は、高間センセーと周辺の人々にあるわけだが、ほとんどの人物があくせく働きたくない人たち。第1話で転がり込んできた若い男女は悪い方向に走った典型だけど、国重ちゃんと有野クンはいいですねぇ。まったりと若隠居。

バリバリのキャリアウーマンの大西さんは「働く人」だけど、それが気に入らないから不眠症になっているわけだし、高間センセーに惹かれている。こういう生活はいいかげんに止めませんか、というのが著者のメッセージかも。

ところが、唯一、高橋の綾ちゃんだけが前向きに働く価値観を是としている。破産で父親が逃げて、弟妹を養っているのだから、そうならざるを得ないのだが、綾ちゃんは本質的に働くのが好きだし、人と関わり合うのが好きな人なんだと思う。そうそう、いろんな人がいていいんだ。

こういう、さまざまな人間をからませながら、少しずつストーリーを描いていく筆力に脱帽。
絵筆のような描線は好みが別れるだろう。すっと一気に描いた勢いを感じておもしろいと思った。

「茄子」をテーマにこれほど物語を描ける人間を私は知らない
一つ一つの小品が際立ち、違う色彩を放つ。
絵がうまいわけではない。
しかし、黒田節とも言うべきなんとも言えない
さわやかな読後感を残してくれる。
彼の何気ない日常を的確に捉える着眼点が
何よりストーリーに不思議なリアリティをもたらしている。

多少の好き嫌いがあるかもしれない。

だが一癖あるものが好きな方は絶対にはまること請け合いである。