藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)

- 講談社 価格 ¥ 730
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藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)


講談社

価格(new/used): 730 円 / 151 円 より
発売日: (2006-01) アマゾン売上ランキング: 42672 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 7件

いろいろ考えてしまった
自分と異なる風貌や言動に対して拒絶したくなる気持ちは誰にでもあります。民族や地域と関係なしに人間がもつ本能だと思う。でも日本は寛容度がちょっと低いかもしれない。

藤田嗣治の変わった風貌や言動はかなりの抵抗感を与えたに違いない。現代でさえ、東京以外の町を彼が歩いていたら振り返ってしまうかもしれない。藤田夫人の証言に基づいた伝記なので、多少とも良いほうにバイアスがかかっているでしょう(感情移入のない伝記はないですが)。でも、死ぬまで作品制作に没頭した画家としての生き様のみで十分じゃないかと思うのです。他に何を要求すべきだったのでしょうか?

多くのフランス人形が取り囲むベッド、和風のアトリエ、晩年に多く書かれた生を感じない子供の絵。彼の寂しさが伝わってきます。本書の最後に出てくる遺品に関するエピソードもなかなか深い読後感を残します(ちょっとできすぎですが)。乳白色の肌でパリの花形画家に躍り出た時代、戦中の日本での時代、その後のパリでの生活、そして晩年。この本を読んでから絵をみると、また違った感動が押し寄せてきます。
藤田の劇的な生涯が再現されています。・・・何故か目が滲んでしまいました。
誰かが「日本人はあの戦争を泣きながら戦った」と表現していました。藤田の「アッツ島の玉砕」は、そうした意味で、あの戦争が日本人にとって、どのような戦争だったのか、についてのある側面を、見事に表現していると思います。そして、戦後の藤田に対する戦争画家としての否定的な評価は、戦後の日本が、戦争とどのように向き合ってきたのかを象徴しているようです。(誰かのせいにして自分自身は免罪するというような・・・・)・・・・藤田にとって「アッツ島の玉砕」は、長年求めてきた日本的なものとの融和、絵画にしかなしえない、超越的世界との融合などを実現した芸術的極致だったと思われます。「アッツ島の玉砕」が戦争画として唾棄すべきものなら、ルーブルのドラクロワやダヴッィドの絵も同様でしょう。無言館の絵や浜田、香月の絵を並べながら、戦争画を批判する視点は確かに大事ですが、戦争画にも様々なものがあるということも否定できないと思います。・・・・・藤田は最後は芸術世界のコスモポリタンになったという著者の評価はやや性急すぎるかなとは思いましたが、全体として、非常に良くできた書物だと感じました。・・・・最近は、藤田というと、例の乳白色の絵、エコールドパリの画家というイメージが強いかもしれません。私もかつてはそうでした。この書はそうした一面的な藤田像を変え、より広がりのあるものにしてくれます。
夏堀全弘『 藤田嗣治芸術試論−藤田嗣治直話− 』との比較
単行本についで文庫もあったのですね。確かに番組はすばらしいですし,藤田嗣治の語りも面白いです。語りかけられた内容に含蓄があります。特に戦争画に興味がある私にとって,興味深い情報がたくさん詰まっている書籍です。藤田嗣治の直接の語り掛けは星5コでもいいのですが,気になる指摘をwebで見つけました。藤田語りかけは,藤田に自分の評を送った個人研究者夏堀全弘氏に対する返信であったということです。たしかに,マスメディア権威であればその資料を手わたされる機会は十分あると思いますが割り切れなさを感じてしまいます。それで星1つ。
さて,内容的には,悲惨な末路を描いた戦争殉教画敵な作品であるから,戦争協力画ではない,それを超えたといった見方には賛同できません。軍民ともに運命をともにし,最後の一人(一兵でなく)まで戦うという「一億総特攻」「玉砕戦」を主導するのに「戦争殉教」は適った理念でした。捕虜や生き残った民間人が合計1万5000名いたサイパン戦で,忠臣同胞も潔く玉砕したことを表現したのであれば,これはサイパン戦の悲劇の半分を描いたに過ぎません。捕虜となり生き残った多数の人々や玉砕を信じて,再び沖縄戦で集団死した人々のことも思うとやり切れません。現段階で描かれた戦争を十分分析するのと当時の状況は違いますが,現在のわれわれとしては賛同できないところも多いです。

天才は天災かも
京都での展覧会、知人にすすめられ、行くとはまりました。帰りにこの
本を買い、読んで見ました、2日間で。友人の新聞屋さんは、戦後のマ
スコミの扱いで彼が一人『戦争画」の悪役になり、本当にかわいそうな
人でした。でもこのの本を読んでいると、彼は実力(当時のフランスで
日本人作家として、相応の評価を得ていました。)は、日本に帰ると煩
わししものかも知れせん、当時の日本画壇では。帰国した30年代か
ら、日本が好きな彼は自らすりより、結果すてられたそんな風にしか解
釈できません。当時の画家といえば、佐伯祐三も好きですが(追記大阪
近代美術館準備室の講演で佐伯はゴッホみたく生前はうれなかったそう
です、だから当時藤田との接点はなかって当然です)、藤田は、
今で言うとイチローです、タイトルを取れた画家だと思います。展来会
のある地域の人は必ず見ましょう、その前後にこの本を読めば、彼の絵
のありがたみがわかります。同じ時期に白州次郎も読みました。才能と
胆力のある人はすごいと思いました。
独創的がゆえに「村社会」から疎外された孤高の人
今年はフジタの生誕120年でいま記念展が行なわれているが、私はこの本で画家・藤田嗣治に対する見方ががらっと変った。たまたま、新聞の書評でこの本の存在を知り、興味をおぼえ読んでみた。それまでは、風変わりな格好をした奇行の人、といったイメージしかなかった。しかし、その生涯を読んでみると、日本的な村社会のルールを守らず、自己の独創的な絵画の世界の構築に生涯こだわったため、「村社会」から疎外され、不当な評価を受け、最後は国籍も捨て、カトリックに改宗した孤高の人であったことを知った。ユニークと言う言葉は、日本語ではちょっと変った人というやや否定的なニュアンスを持つが、英語では最高の褒め言葉だ。この本に描かれた彼の生き方、物語という情報をインプットして彼の独創的な手法や絵画を見ると、フジタの芸術の素晴らしさ、なぜ、フジタがヨーロッパで評価されたのか、なぜ日本で評価されなかったのかが良く理解できる。この本を読んでお蔭で私はすっかりフジタのフアンになった。絵画における独創性というものを理解するうえでも非常にいい本だと思う。