取り替え子(チェンジリング) (講談社文...

- 講談社 価格 ¥ 650
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取り替え子(チェンジリング) (講談社文庫)


講談社

価格(new/used): 650 円 / 136 円 より
発売日: (2004-04) アマゾン売上ランキング: 135246 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 3件

衰えを感じさせない力作
大江作品を読むのは「個人的な体験」「万延元年のフットボール」に続いてこれが三冊目になる。
「万延元年−」から33年経ているにも関わらず、ほとんど衰えを感じさせない力作。
本書は大江氏の義兄で映画監督の伊丹十三の自殺が題材となっており、事実の部分とフィクションがごちゃ混ぜになっているのは、大江氏の作品ではいつもの事なのだが、初めて大江作品に触れる人は面食らうかも知れない。
小説の中では、大江氏自身も伊丹氏も別名で書かれており、他にも様々な有名人、文化人が別名で(又は名無しで)登場し、それらが誰の事なのか推理する楽しみもある。ただ、そのうちの何人かは批判的(あるいは敵対的)に書かれており、この様に虚実が入り混じった小説の中で実在の人物をこき下ろすという事は、果たしてフェアなのだろうかと感じたのだが、どうだろうか?
本書を手に取った人は、誰もが伊丹氏の自殺事件の真相や動機が明らかになる事を期待して読むと思う。そして、少年時代の四国での事件がどうやら深く関わっているらしいという期待を抱かせながら、最後は予想もしない意外な方向へ展開していき、読者の期待を裏切る事になる。結局本書は伊丹氏の死を題材にしたフィクションであり、そして作品としては実に秀逸かつファンタスティックで、事件の真相などはどうでも良いという気分にさせてくれる。
読みやすくなった大江文学
今までの大江文学に対する私の問題は、彼の文章が読み難い事でした。それはそれで、大江さんの特徴であると味わってきましたが、「取り替え子」に措いては今までのように文体に支えるような感じがありません。このことだけをとっても、今まで以上に沢山の読者に読まれることになると思います。
内容も理解しやすくなって、共感を呼びやすくなっています。これは親友であり、義兄である伊丹十三の自殺による衝撃から大江さんが立ち直るために書かれたように思われます。ゆかりさん(大江さんの奥さんで、伊丹十三の妹)の視点で書かれているところなど、女性としての兄の死の受け止め方が、「チェンジリング」に照らし合わせて行われている点で、この物語が奥深いものになっていると思います。
大江健三郎作品で一つを選ぶとしたらこれです
これまで、大江作品はそんなに好きではなかったのですが、この本を読んでから、私の中で、これから新作を待つ作家の一人に加わりました。

なぜ自殺するのか、なぜ生きつづけられるのか、そんな問いの答えを探す小説のように感じられました。