乱世、夢幻の如し〈上〉 (講談社文庫)

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乱世、夢幻の如し〈上〉 (講談社文庫)


講談社

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発売日: (1997-03) アマゾン売上ランキング: 278750 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 3.5 / 総数: 3件

大変な勉強にはなる
もちろん上下で読んでおります。
このところ、この本にかかっていたので、全然ほかのもんが読まなかった。
だいたい戦国時代ものと言うと、信長、秀吉、家康が主人公で、ほかの人物にスポットが当たることはなかったけど、ここでは、松永弾正久秀、主殺しで有名で、ま、知られていることと言えば、後は無節操にもあっちへこっちへととにかくその時その時の強いもんになびく、くらいにしか知識のなかった、その弾正久秀が主人公の物語。
いやぁ、知らなかったわぁ、と言うことがたくさん出てきます。ただ、ま、とにかく、味方が敵に、敵が味方に、ころころかわるし、結構名前が(下の)よく似ているので、相当相当混乱。おまけに、同じ名字の人物が必ずしも味方ではないんでねぇ。
しかし、この、信長が桶狭間を戦い、おおよその全国平定に近い段階までの時代、京都を中心にした畿内がこんなに混乱していたとはしらなかった。
それから、法華宗や浄土宗の一揆のこともね。いやはやほんと知らんことばかりでした。。。
ただ、読みもんとしてはどうでしょ。ちょっと、「物語」ではなく、わたしゃどっちか言うと、日本史の資料を読んでいるような(それはそれで楽しいが)気分でしたわ。
うーん…
松永弾正を描いた数少ない作品という点で貴重。
だがやはり津本氏の作風で、ストーリーの合間々々に無機質で扁平な史伝的事項をダラダラと羅列するために物語に入りこめない。さらにその史伝も室町幕府と三好氏中心なので、主役たる弾正の影が薄くて物語中盤にはほとんど出てこない。序盤以外は躍動感に欠けるのは否めない。
悪人の伝記
日本人の小説には、悪人を悪人として描いたものが少ない。それどころか、史上悪人とされる人物の「再評価」と評して、「実は立派な人物だった」と言うのが昨今の歴史通の流行らしい。日野富子など、その典型でしょう。

この本は、そんな甘っちょろいものとは違います。松永久秀という男は、主君を次々に裏切り、邪魔者を片端から謀殺し、ついに大名にのし上がった。その血なまぐさい過程を、筆者は容赦なく描きます。宿敵・筒井党との、女子供まで手にかける残忍な戦闘ぶりや、狡猾な畿内の武将達との果てしない騙し合いと殺し合い、かつての朋友を平然と信長に売り渡し媚を売るその姿に、共感することはないでしょう。
それでも読後感が何か爽快なのは、いさぎよい最期もさることながら、悪人を悪人として正面から描ききった筆者の姿勢に共感できたからかもしれません。筆者の、史料を取り混ぜた、つき刺すような文体も活き活きとしています。

日野富子伝もこの人に書いて欲しい。絢爛たる悪女伝になること請け合い。