二重らせん (講談社文庫)

- 講談社 価格 ¥ 490
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二重らせん (講談社文庫)


講談社

価格(new/used): 490 円 / 110 円 より
発売日: (1986-03) アマゾン売上ランキング: 37759 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 12件

勢いある本
以前読んだ『生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)』で紹介されていたので読んでみた。ワトソンやクリックは当時、同じような研究をしているポーリングという人との競争の中で必死であり、DNAの構造解明に先を越されまいと相当燃えていたようだ。そういう気分がよく伝わってくる勢いのある本だ。素人にはさっぱり不明な議論も含まれていたが、わかればもっと面白いだろうが、まあわからなくても読める(飛ばせばいい)。生物の教科書に気難しそうに並んでいた「ワトソン-クリック」だが、本書にかかると躍動する。二人は共同研究ではあるが、いつも仲良くやっているわけでもなく、ワトソンがしばしばクリックのおしゃべりに眉をひそめることもあれば、また逆に、クリックが「大事な時期なのにテニスなんかして」とワトソンを非難がましい目で見ることもあったという。こういう人間くさい部分を特に隠し立てもせずに描いているところがとてもおもしろい。

いまではみな二重らせん構造を当たり前と思っているが、当時ポーリングなどは三重らせんと考えていたくらい、不明なものだったそうだ。それを二人は解明したわけだ。その解明の仕方として、モデルを先に作ってそれを事実と照合させるワトソンやクリックの方法と、事実から何かをゆっくり引き出そうとしたフランクリン女史の態度が対照的に思えた。研究の態度として、一種の奔放さから自分で想像的(創造的)なことをひねり出す「やわらかい」過程を通れるこういう二人みたいな人こそ、何か最終的には偉大なことを成し遂げるという感じはする(いわゆるガリ勉は、本来学者に向いていないのだろう)。彼らの場の空気みたいなもので、巻末の登場人物の業績なんかをみていると、彼らの周りにいる人々はことごとくノーベル賞をとっているようである(ポーリングも別の業績でとっている)。まるで灘や開成では東大進学が当たり前みたいなノリだ。
ワトソン=嫌な奴
ノーベル賞受賞者の中でもこれほど本質に関わらず受賞した人間も珍しいのではないだろうか?
最も恩恵を受けたロザリンドをここまで見下すと言う事は穿った見方をすれば、彼女への嫉妬が
本書を書く最大の動機だったのでは?と思わずにはいられない。本来受賞に値する人間がクリック、
シャルガフ、ロザリンドであったと言う事をこの本は図らずも露呈してしまっている。その意味で
星は六つあげても良い。ワトソン君、一番嫌な奴は君なのだよ。
はじめて知った科学者の世界
いつも当たり前のように見ている、あの二本の帯が螺旋状にねじれているDNAの構造をときあかすまでを、当のワトソン博士が、生き生きと綴る。想像以上に人間的で、予想を排したフェアプレイで、ライバルたちが研究に挑む姿は、下手な小説の数倍も面白い。科学の苦手な文学青年にも少女にも、ぜひお勧めしたい。
それにしても、今の研究だったら、CGグラフィックを使うのだろうか、最後にいまの構造を思いついたワトソン博士が、それをかたちにするために、模型ができるのを何日か、今か今かと待っているのが、何とものどか。
若干25歳であんな偉業を成し遂げた彼に嫉妬を覚えつつも、オックスフォードやケンブリッジの描写も旅行で訪れた、かの地を思い出させ、イギリスの香りをも楽しませていただいた。



大発見の過程の生々しさ
生物学史上、今世紀最大の成果と言われる「DNA構造の発見」。本書は、発見者の一人ワトソンがその発見の過程をドキュメント・タッチで綴ったもの。イギリス人で偏屈ではあるが理詰めなクリック。アメリカ人で直感力に優れ野心家のワトソン。この若いコンビが世紀の大発見をする模様が当人の筆で書かれているので迫力がある。

研究の場所は主にケンブリッジ。ワトソンは当時のイギリス人から見ればヒッピーのような姿でやって来たのだ。研究者の間には当然激しい競争がある。自分の研究に対して、他からの反駁・無視があるという恐れもある。研究者と言っても通常の人間同様、生々しい感情があるのだ。話の前半は主に人物紹介に費やされ、"発見"に近づくに連れ緊迫感も盛り上がる。しかし、ワトソン達が多くの研究者から情報を得られたのも、場に恵まれたからで、研究環境も非常に大事だと感じた。が、この中で"フェア"な情報入手の割合がどの程度であったのかは分からない。

本書を通じて、女性研究者に対してあまり公正ではない気がしていたが、特に著者らの論に強硬に反対していたロージィが土壇場で急に賛成に回ったのは話がうますぎる気がした。また、ワトソンが自分の野心を率直に書いているのはアメリカ人特有のフランクさか、本人固有の特質か。

いずれにしても、"世紀の大発見"の本人が書いた迫真のドキュメンタリである。生物学、遺伝学に興味のある方にお勧めの一作。
野心を抱くとどうなるのか
特異な野心家ワトソンという人物を知る手がかりとなる本です。ワトソンはノーベル賞ももぎ取った天才的(天災的?)野心家ですが、執筆でもその才能を大いに発揮しています。

DNAのらせん構造発見劇をワトソンの目を通して赤裸々につづったという体裁で書かれていますが、ワトソンの目にどう映ったかではなく、ワトソンにとってどうあってほしかったか、という観点で編集されている内容、というのが正確なところです。

はげしい野心をもった人間の心を知るためにも興味深い本です。