脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)

V.S. Ramachandran - 角川書店 価格
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脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)

V.S. Ramachandran
角川書店

価格(new/used): -- 円 / 1,380 円 より
発売日: (1999-08) アマゾン売上ランキング: 2675 位
単行本 / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 21件

不思議な患者を科学的に説明。苦労して読むだけの情報は十分。
神経学者であるラマチャンドラン氏の著書を邦訳した書。同氏は、四肢を切断した後にも、その感覚が脳に知覚されるという幻肢のメカニズムについて、きわめて単純な方法で科学的に研究したことで知られている。本書では同氏の多くの研究論文に基づいて、精神疾患のような一見不可思議な症状を示す症例について、脳科学的な考察を述べている。また、他の研究者の多くの論文を総説として紹介している。自分の首を絞めようとする左手を、右手が押さえつけるという女性患者や、失った手で物をつかもうとする患者、笑い死にした患者などについて紹介している。個々の症例についての記載は理解できるが、解剖学的専門用語なども頻出するため、読破には数日は要する。

脳科学に画期的変化をもたらした機能的MRI(fMRI)による研究論文がほとんどなかった1999年に出版された書であり、紹介されている研究手法も古いものがほとんどである。しかし、論理的な思考で考案された実験方法は的を射たものが多く、本書の出版後に明らかになった事実とも整合性を保っている。紹介されている内容のうち、とくに鏡を使って失った四肢を復活させる錯覚をあたえる実験などは、単純ながらも読んでいて非常に面白く、単に脳科学の情報を得る以外にも、客観的思考の重要性が伝わってくる。背景となる不思議な症状をありのままに伝える各章の冒頭はは推理小説のようで、著者の文章力(と訳者の力量)が優れていることも本書が面白い理由と思われる。主張の根拠も巻末に明示されており、紹介されている論文をいくつか検証したところ、客観性十分でかつ面白いものばかりであった。

難点は、実験方法を図示していないため、文章だけでは理解しづらい部分もある点。ただし、同氏の論文には詳細な図や写真が掲載されている。上記問題点を差し引いても、一冊の書としての完成度は高く、非常に面白い。やや読破に時間を要するが、それに見合った情報は十分で、値段分以上の価値があると思う。星5つの評価。
科学的見地から「意識」「自己」とは何かを鋭く掘り下げた力作
脳神経科学でありかつ臨床治療の経験も持つ著者が、科学的見地から「意識」「自己」とは何かを鋭く掘り下げ、非専門家にも分かりやすく書き下ろした力作です。

自らが携わった脳神経疾病患者の臨床治療の経験および、脳神経科学に関する深い洞察力に基づいて、その疾病の根本原因に切り込む当たりの態度は、やはり医者というよりは科学者の立場です。しかしながら、医者よりもより真摯に患者の個々の症状をしっかりと観察し、その患者に最適の対処法を見いだそうとする態度は立派です。

本書の題名にもなっている「幽霊」は、いわば「無意識の自己」とも言えるでしょうか。「視覚などの情報が脳で処理されること」と「見えていると認識すること」との違いをはっきりと読者に理解させてくれます。つまり、本人が見えていると認識していなくとも脳の中の無意識の自己は対象物を見ていると言うことです。

随所に心に残る言葉が見いだされますが、その中でも特に私が感銘を受けた言葉をここに紹介したいと思います。
『人間は他の哺乳動物とはちがって自分が死ぬ運命にあることをはっきりと自覚し、死をおそれている。しかし宇宙の研究は、時間を超越した感覚や、自分はより大きなものの一部であるという気持ちを与えてくれる。自分が進化する宇宙という永遠に展開するドラマの一部であることを知れば、みずからの命に限りがあるという事実のおそろしさが軽減される。(中略)シヴァ神の偉大な宇宙ダンスの一部であるとしたら、避けられない死も悲劇ではなく、宇宙との喜ばしい再結合とみなせるはずだ』
著者の洞察は凡百の哲学者のそれを超越していると言っても良いでしょう。

また、原註はそれだけをまとめても一冊の本になるくらい充実していますし、これだけの大著を読みやすい日本語に訳した翻訳も非常に好感が持てます。訳者の力量もたいした物です。
人の心の不可思議さを実感
 およそ人間の心というものは、我々が日常的に考えているよりも遥かに複雑で神秘めいたものがあるようです。すなわち、無くなったはずの腕に激痛がはしったり、麻痺して動かなったりする(!) 「幻肢」、自分の体も含めて左半分の世界を喪失する「半側無視」、特定の人に対する愛着を感じられなくなったが故にそれらの人々を偽者と思い込む「カプグラ・シンドローム」などなど、想像及ばぬような不思議な病理が、世の中には実際に存在するのだとか。
 本書は、これらのシンドロームを、心理学や精神病理の側からではなく、神経学の方向からアプローチすることにより、脳と心の一筋縄ではいかない関係に迫ろうとしています。そして更には、側頭葉てんかんと宗教感覚との関係や「クオリア」の問題を通じて、「意識とは何か」、「自己とは何か」という大問題に、西洋科学が取り組んでいく可能性を示唆しています。
 専門用語も少なからず登場するものの、全般的には平易で洒脱な語り口であり、楽しく読める本だと思います。人の心の不思議さに問題意識をお持ちの向きには、読んでみて損はない一冊だと思います。
とにかく面白い脳の本
 何度も読み返してしまうほど面白い。著者は脳神経学者であり、幻肢治療のスペシャリストである。幻肢というのは切断した腕などが無いにもかかわらず、存在しているように感じる現象で、ひどい激痛を伴うこともあるが治療方法がなかったのだ。それを実に簡単な方法で治療した名医でもある。
 また、本書のキモは、脳の局所的障害によって生じる異常な事例の紹介である。半側無視という症状を示す患者は、知性は普通なのだが世界から左が消えてしまい、お化粧も顔半分しかしなかったりと凄いことになる。他にも興味深い症例はわんさと出てくる。
 似た内容の本では世界的にベストセラーになった『妻を帽子と間違えた男』があるが、私の所見ではこちらの方が5倍は面白い!
 これほど知的好奇心を刺激する本も珍しい。とにかくおすすめの一冊である。
ラマチャンドランと言うインドっぽい名前も好き。
オリバー・サックスからラマチャンドラン。ラマチャンドランからアマルジャンへと私の場合は続きました。脳の側頭葉にある「神の回路」については私の脳がショートするぐらいおもしろかったです。本当は難しいことなんだろうけど、文章も分かりやすいし、最後まで楽しく読めました。「脳のなかの幽霊、ふたたび」もあります。