奇蹟 (朝日文芸文庫)

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奇蹟 (朝日文芸文庫)


朝日新聞

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発売日: (1994-02) アマゾン売上ランキング: 491345 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 2件

中上健次
中上健次の作品に出会い、それまで小説というものに対して抱いてきた印象や価値観を殴り倒されたような衝撃を受けた。中上健次という小説家のことを人に紹介しようと考えるとき、頭の中で相手に伝えたいことが横溢し、意識の洪水が起こり、脳がインポテンツになり、やがて何も言えなくなる。ある特定の作家への過剰で盲目的な賞賛は時として他人に嫌悪感を与えので、中上健次自体を神話化するといった行為は逆に中上のやってきたことを世に伝えにくくしてしまうのかもしれない。中上讃歌はこのあたりでやめておく。ただ、ひとこと言うなれば、小説家・中上健次は1字1句ほんきであったのだ、と思う。

彼の本から1冊を選ぶとすれば、「金色の小鳥が飛び交い夏芙蓉の花が咲き乱れる路地」における最後の貴種流離譚「奇蹟」を選ぶ。この小説はこの上なく優しく、暖かい。その優しさ、暖かさは、「奇蹟」という物語の内容から来るものではなく、1字1字ほんきで書き続けた小説家と、その読者とのあいだにだけ存在する優しさと暖かさなのである。(もちろんこれは読者=ぼくの勝手な思い込みであることは言うまでもない)ただ、このような体験は空前であり絶後であるとまでは言わないが滅多にあることではない。この本を読んでいたときに本を読むことの嬉しさと、幸せを最も強く感じた。

中上健次
中上健次の作品に出会い、それまで小説というものに対して抱いてきた印象や価値観を殴り倒されたような衝撃を受けた。中上健次という小説家のことを人に紹介しようと考えるとき頭の中で相手に伝えたいことが横溢し、意識の洪水が起こり脳がインポテンツになり、やがて何も言えなくなる。

ある特定の作家への過剰で盲目的な賞賛は時として他人に嫌悪感を与えので中上健次自体を神話化するといった行為は逆に中上のやってきたことを世に伝えにくくしてしまうのかもしれない。なので中上讃歌はこのあたりでやめておく。
ただ、ひとこと言うなれば小説家・中上健次は1字1句ほんきであったのだと思う。

その彼の本から1冊を選ぶとすれば”金色の小鳥が飛び交い夏芙蓉の花が咲き乱れる”「路地」における最後の貴種流離譚「奇蹟」を選ぶ。この小説はこの上なく優しく、暖かい。その優しさ、暖かさは、「奇蹟」という物語の内容から来るものではなく、1字1字ほんきで書き続けた小説家と、その読者とのあいだにだけ存在する優しさと暖かさなのである。(もちろんこれは読者=私の勝手な思い込みであることは言うまでもない)ただ、このような体験は空前であり絶後であるとまでは言わないが滅多にあることではない。この本を読んでいたときに本を読むことの嬉しさと、幸せを最も強く感じた。