心はなぜ苦しむのか (朝日文庫)

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心はなぜ苦しむのか (朝日文庫)


朝日新聞社

価格(new/used): 693 円 / 399 円 より
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 4件

思うこと
この本を読んで色々考えました。岸田秀の親子関係でややこしいのは「自分は親のことが嫌いなんだ、と確信した時にはもう親が死んでしまっていた」と言うことでしょうね。
「フロイドを読む」の女の子をバイクで轢いて平然としていた話があって「親の世界が偽者だから、自分は現実感をもてない」と分析していた。要するに孤独な人なんだろう。まわりに人は集まって来て、それなりに楽しく会話したりしても、自分はどこか違う世界にいるような気がするんじゃないかなあ。唯幻論という歴史に残る思想を発表して、作家として成功してはいるけど、かわいそうな人ですよね
だから岸田秀の思想は、みんな過去の歴史事実を引っ張ってきて、そこから論理を組み立てていくというやり方でしょう。歴史も性も時事ネタも全部そうですよね。直感がまずあって、その直感を証明するためにあらゆる言葉をひっぱってきて文章を作るという書き方じゃない。もちろん岸田秀にも直感はあるのだろうけど、やはり他の作家と比べるとその直感力は弱い。岸田秀を読むと「そこまでわかっているのに、どうしてこれだけ?」って思うじゃないですか。それは内容じゃなくて、量のことですけど。
だからはっきり言えば「岸田理論」を完全に理解してしまえば、もう岸田秀の他の本を読む必要はなくなる。今の作家がやらなければならない事は、「岸田理論を理解して、その上で自分の直感で自分の分野を切り開いていくこと」だと思う。事実そうしている作家が素晴らしい作品を書いているような気がする。「唯幻論でしか歴史はわからない」は本当だけど、「岸田秀のやり方でやる」のは間違いだと思います。間違い、という言い方が正しくないとすれば「岸田秀のやり方でやるのは限界がある」しかも、その限界を岸田秀は全てやってしまっていて、後から来た人はこのやり方ではもうやるところがない。岸田秀のファンはまずここでつまづく。まあ、そこのところで突っかかってるのに気付かないでずーっとそのままでいる人も何人かいますけどね。「あのさあ、信じることと狂うことは同じだ、って岸田秀は言ってなかったっけ?」といいたくなります。まあこんなこといったらどうなるか、ってのは目に見えてるから言わないけどサ。
岸田秀と言う人は非常に真面目なんだと思う。人間は絵の具で、ちょっとしたことで混ぜ物が入ってしまう、岸田秀はその混ぜ物が入ることを極度に恐れている。たぶん「そうなったら人間終わり」とすら考えているのではないか。だから怒る時はすごい怒るんでしょうね。人間のいい加減差を愛しながら、いい加減な人間には強い怒りを感じる。そういう風に生きていれば当然傷つく事も多い、若い頃精神病にかかっていまだに完治出来てない理由もそれでしょう
この本の中には明らかに気付いているにもかかわらず、その事を言わなかった部分があると思う。それは「もし親がまだ生きていたらどうしますか」と聞かれて「縁を切って会わないようにする」と言うところです。話はそこで終わっていますが、たぶん言わないでいるその続きは、「でも、もしかしたらそうやって縁を切って、時間がたてば完全には許せないけど、少しは許せるようになるかも知れない。少なくとも『母が嫌い』の一点張りではないと思う。母に『あなたのことが嫌い』とはっきり言って、そこから再び人間関係をやり直すということが、母が死んでしまっているので出来ない。だから自分は『母が嫌い』だけになってしまって、そこから先へ進めないことがとてもつらい」一方的に言うだけ言って、こっちが何か言い返す前に相手が逃げ出してしまうのは「ずるいよ、それ」って思うでしょうね。岸田秀が多産なのは、埋められない穴を何とか埋める方法はないか、という模索が執筆になっているからだと思います。人間関係は要は付き合い方です。それがうまくいかないから、つらいんですよ。
神経症や人格障害に苦しむ人に
世の中には絶対に許せないことがある、一生をかけて恨み続ける人がいる、という目を背けたくなる現実をこの本で改めて知ることになりました。みんなが仮面を付けて生きる時代に、誰にも知られたくないような自分の傷ついた心を本にして世間に発表する岸田秀の勇気に感動します(当然この本の読者から反発を受け、かえって岸田秀が傷つくと言う可能性だって十分にあるわけです)こんな事をする作家はそうはいないでしょう。
 それにしても、母を許し、かつ岸田秀の心が安定するという、何か、うまい方法はないのでしょうか。人を恨むことで自分の心が安定するなら恨むしか方法が無いのでしょうか。  

 神経症をテーマにした本なので神経症や人格障害に苦しむ人にお勧めです
 

治療効果のある本
この本は心理学者である岸田秀と、彼と旧知の仲である編集者の対談です。
2人は同時期にうつ病・神経症などをわずらいました。それから1年ほど
経ったころ、まだその思いが新鮮なうちにお互いの神経症・うつ病体験を
振り返り話し合ったものです。
自身の体験をもとに語られる二人の真剣なやり取りは、読むだけで心の病への

理解を深め、現在悩んでいる人には治療効果さえあるでしょう。
ありがちな、心理カウンセリングする先生が一段上の高みから患者を
諭していくというようなものではなく、対談している2人自身が患者であり
カウンセラーであるというところが独特です。2人自身が誰よりも
心の問題を理解したいと願い、苦しんでいるというところがこの本の内容的

価値を高めています。

本質。
多少なりとも、周りの目線を気にする人間にとっては一般書店で購入するのに気後れする題名である。が、岸田秀を読むにあたってはよい序編となるのではないだろうか。

人間は狂ったサル。自我はその成り立ちからして不安定であり、人間であることは不安に苛まれること。その著者の考察からは、本能に頼ることができずに自我という幻想から無縁の動物ではいらなかった、一種の奇形としての人間に対する静かな諦観がある。

絶望のふちで死にそうになっているのなら、万が一の場合救われたりするかもしれない。

その後は、こういった類の本からは卒業して「金持ち父さん」でも読むのが良いと思うが。