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犬身 |
| - 朝日新聞社 価格 ¥ 2,100 | |
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犬身朝日新聞社 価格(new/used): 2,100 円 / 898 円 より 発売日: (2007-10-05) アマゾン売上ランキング: 15077 位 単行本 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 11件 丁寧な描写で犬好き必読「お互いが好き」が全てである純粋な関係を描くために、男×女でもなく、女×女でもなく、このようなファンタジックな設定を作者はとったのかな、と思いました。犬になった主人公のしぐさ、動きの描写がとても丁寧で可愛らしい。彼(彼女?)の中には、本当に飼主を思う気持ちしかないのです。 飼主の梓を取り巻く病理自体は、極めて現代的で、他の小説でもありえるのだけれども、ここにメフィスト的な超現実を重ねて、読ませるのが作者の飛びぬけた力量ですね。 私は梓のような女性は余り感情移入できませんでしたが、ラストシーンはとても美しく、良かったな、と思いました。謎の狼人間(?)朱尾の心の動きも非常に細やかに描写されているのですが、謎は謎のままで、でもそれでいいような気もしました。 「あれかこれか」からゼロへ一気に読めてしまう通俗性を兼ね備えつつ、松浦さんが考えていることはものすごいのだというのは「親指P」以来の読者でありながら「裏ヴァージョン」で始めて感じたことでした。この小説はその極限にきているようです。 御大・蓮実重彦さんのように、そこに三角関係の構図を壊そうとする「構造」を読み解き、さらに「構造」におさまらない「細部」として、自転車や狼との交流の描写を言祝ぐこともできましょうが(「小説トリッパー」2007年冬号だったかな)、気になるのはより一般的にジェンダーのことでした。 性器ではない性を求めた「親指P」、愛ではない心の交流を求めた「裏ヴァージョン」。本作では、性ではない魂のふれあいを求めているようです。つまり「あれじゃない、これでもない、それでは・・・」と迷い続けるのが今までの作風だったとすれば、「あれでもなく、これでもない、端的に何でもない」=ゼロの地点にたどりついた? 男と女ではなく、女と女でもなく、人間と犬。セックスではなく、愛撫でもなく、性ではない愛情。ジェンダーなし、差別なし、関係なし。 松浦さんはその後の対談(対星野智幸、対川上未映子)で「個人と個人の違いがあることが苦しい」といっています。関係のないところで生まれる情愛やふれあいが、現象学的な主客未分の同根思想とどう関係するのか、気になるところです。 生々しさのあるファンタジー著者の作品は「親指P〜」以来。 どちらにも性的な生々しさとファンタジーが共通しているが、 この作品では生々しさの方が強く感じられたのが少し残念。 犬好きな人間が犬好きな人の犬になる、というファンタジーが軸だが、 周りの人間たちの愛憎劇(家庭崩壊、失踪、近親姦)が濃すぎて ファンタジーの楽しみやそこにある喜びが薄まってしまった。 もっともっと犬の身になった人間(半人半犬)のファンタジーを 膨らませてほしかった。 主人公と同じく、犬を羨ましく思う私の願望のせいかもしれないけれど…。 ラストがせめてもの救いか。 魂のレベルで肉体を語る著者が一環して描いてきたテーマは「性愛」と表現されがちだし、私自身も一言で表せと言われれば迷った挙句結局「性愛」と答えると思うのだが、この言葉が的外れでないにしろどうもしっくりこない気がいつもしていた。この作品ではそれが特に顕著に感じられる。 『犬身』は自らを「種同一性障害」「ドッグ・セクシュアル」であるとする主人公・房恵が(比喩ではなく)犬になる物語だが、彼女が飼い主である梓に抱く愛情には恋愛感情に伴うような嫉妬心と無縁だし、男が女に、女が男に、あるいは男が男に、女が女に抱くような性的欲求もそこにはない。 ただ、「撫でられたい」という欲求、撫でられることに肉体的な「心地よさ」――それはいわゆる「性的な」反応と酷似している――を感じるだけだ。梓と房恵の間に通う無言の情感の濃密さは、定義によっては「恋愛」の範疇に入りそうでも、入らなさそうでもある。 つまり性別どころか種の枠組みさえ簡単に取り払い、肉体を超えたところでなお肉体的快楽についても言及しようとするこの小説では、「性的〜」という言葉そのものがそぐわないのかもしれない。 近親に対して性的欲求を感じる人間は性別の意識が極めて強い、という仮説が作中に登場するが、梓の兄・彬はその意味でこの作品が取り払おうとしている枠組みそのものとも捉えられる。朱尾が、房恵の梓への性的態度に注意深くなるのも、性的な枠組みに囚われることで房恵の魂が肉体に囚われることを懸念するからかもしれない。 読む前とだいぶイメージが違いました読む前は「犬になった人間が人間の脳で犬社会を考える」というやや典型的な小説なのかな?と思っていました。 読み進めていくうちに、唖然……濃いわ濃いわ。 房恵およびフサの設定、梓の境遇の凄惨さ、ミステリアスな朱尾(圧巻に尽きるキャラ)、異常な玉石母子、冷静な傍観者である犬と狼。 シューリアリズムに揺られて酔いそうになるのに、究極に生々しいリアルを突きつけられて、あの分厚さをものともしない面白さを味わいました。 著者の作品は初めて読みましたが、言葉を丁寧に吟味している人だなという印象です。 |