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人間の条件〈上〉 (岩波現代文庫) |
| - 岩波書店 価格 ¥ 1,260 | |
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人間の条件〈上〉 (岩波現代文庫)岩波書店 価格(new/used): 1,260 円 / 580 円 より 発売日: (2005-01) アマゾン売上ランキング: 53538 位 文庫 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 4件 人間とは非常に大きなテーマを投げかけている本です。上中下の3巻構成でそのボリュームも可なりありますが、一気に読み終えてしまうほど読み入ってしまいます。読みながら、そして読み終えてからも「人間」とは一体何なのかということについて考えさせられました。人間らしく生きるとは一体どういう生き方なのか?人間と動物との違いは?正直に生きることは無意味なことなのか?等々幾つもの謎かけを与えられます。あと、本書を読んで私の中で大きく変わったことは「中国人の反日感情」の考え方です。最近の中国の反日行動等に政治的プロパガンダを感じていましたが、日本陸軍が中国大陸で行った侵略戦争の一部が本書には克明に記されています。我々が日中戦争のことを「過去のこと」と一言では片付けられない何かを見せられた思いがします。戦争がいかに人間を醜い動物に変えていくかが痛いほどわかりました。ぜひ、戦争を知らない我々の世代に本書を読んでもらいたい。そしてその中で人間らしく生きるという意味を考えてもらいたいと感じました。 戦争において人間が全うに生きる力をどこに求め得たか戦争は暴力や殺人を合法化する。その中で、人間が人間であることを全うしようとすれば何が起こるのか、人間であるためにはどう生きなければならないか、人間として生きることは可能なのであろうか、人間として生きられなかった時はどうなるのであろうか・・・。作者は、中国東北部における戦争末期を舞台に人間の条件をひたすら追求する。 私は、本年、中国東北部を訪問するにあたって本書を再読した。いくつかの点で、1960年代、最初に読んだときとまた違った印象を受けた。最初は6巻で配本されたが、今回は2巻ごとまとめて上中下3巻となった。各巻ごと、もっとも強く感じた点を一言ずつ記すこととする。 まず上巻:このような時代、人間が全うに生きる力をどこに求め得るのか。作者は、その最たるものとして愛する人を挙げる。しかし、主人公が良心に忠実に生きるためにそれは必要であったけれど十分ではなかった。何がさらに必要とされたのであろうか。それは、鉱山における中国人特殊工人たちとの関係を中心に展開される本巻において、中国人のリーダーを通じ示唆されている。しかし、作者はそれ以上には明言しない。中国人は、それ以後の歴史においてそれを実践するが、日本人は成功裏に経験すること少なく現在に至っている。作者が明示的に書けなかった所以であろう。 人間であるためには人を愛せないのか戦地から復員間もない五味川純平は、この作品を一気呵成に書き上げるやその数千枚の原稿を出版社に持ち込み、編集者はそれに魅入られたかのように一晩で読了したという。この小説の密度や面白さを知れば、このことは少しも不思議ではないだろう。しかし、この小説のタイトルを理解するためには少し説明が必要である。 戦争は言うまでもなく、国家と国家との、兵士と兵士との争いである。一方が勝てば一方は占領され(滅亡し)、一方が勝てば一方は捕虜になるか、あるいは殺される。『人間の条件』はこの当たり前の事実を、愛を描くことによって再確認し、戦争にNO!を突きつけている。中国人捕虜に人間的に接したために最前線に送られた梶は、銃弾飛び交う戦場でも、上官の不当ないじめの横行する自軍の兵舎でも、ヒューマニズムを押し通そうとする。しかし、その梶は常にヒューマニズムと愛との矛盾に悩む男であった。自分に銃口を向ける敵兵士を殺さなかったら自分の最愛の美千子を悲しませることになる。しかし、この敵兵士にも愛する妻がいるのではないだろうか、という悩みである。愛を貫徹するためには殺人を犯さねばならない。愛に殉ずるためには人間性をかなぐり捨てて、人を殺さねばならないという事実は重い。おそらく誰にも正しい答えが出せない難問であろう。靖国や無差別テロの時代にこそ梶の悩みを我々のものとして考えるべきである。しかし、とりあえず、一面雪に覆い尽くされた冬の満州に、美千子の居場所まで一直線に線を引き、疲労困憊の身体でそれを踏破しようとする梶の物語を読んでほしい。現代人が忘れた戦争と愛の物語を。 人間はどこまで理性に忠実なのだろう?人間の条件の主人公、梶は、いわゆる特高(特別高等警察)に逮捕された経験を持つ知識階級の出身者であり、そのような知識人がどこまで理性に忠実に生きていけるかと言う主題が貫かれている。 現在は軍需産業に奉職する一会社員であり、忠実に職務をこなしている。その正確さは彼の能力の高さである。机上では理想主義を貫くことができるとしても、現実の世界の中では難しいことが、巧く描写されている。それは、満州の鉱山への転勤を命じられ、そこで中国人の捕虜を労務者として受け容れるところから始まる。 他の日本人社員と格闘しつつも中国人捕虜を人間として扱おうと努めた。しかし所詮、捕虜にとっては敵である。王という大学の助教授であった中国人と交流を深めつつある一方で、裏切りや恩を仇で返す行為を受けたりしても自分の良心に忠実でいようとした梶は、脱走者の処刑の際、勇気のある決断を迫られる。 処刑対象者の内、二人が処刑され、三人目のときに一歩前に出て、処刑に静かに抗議する。彼も殺されそうな状況になるが中国人の捕虜たちが王の指揮下、それを妨害する動きを起し、殺されずに済む。しかしその後待っていたのは、拷問と徴兵免除の取り消しであった。 私は登場人物の中では梶を支持しつつも、現実主義者的な沖島に共感を覚えたが、主人公が今後、どのような行動をとるのか楽しみにしている。 |