刑法入門 (岩波新書 新赤版 1136)

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刑法入門 (岩波新書 新赤版 1136)


岩波書店

価格(new/used): 777 円 / 410 円 より
発売日: (2008-06) アマゾン売上ランキング: 15903 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 5件

刑法判断の「軸足のずらし」に焦点
犯罪を構成する条件は何かという一点を追究した、理論面からの刑法入門。単純な犯罪ではなく、複雑な要素が絡み合い判断に苦しむような事例を、どのように一般的原理から説明するか。これが、刑法学の課題である。著者によれば、1970年代頃から、刑法の犯罪観は大きく変容し、犯罪を「倫理違反」として捉える視点から、犯罪を「利益侵害」として捉える新しい視点へと移行した(p32f)。これが、本書を貫く通奏低音である。犯罪を「倫理違反」ではなく「利益侵害」とみなすことは、刑事裁判の判決の多くに直接影響を与えるものではない。しかし、複雑な境界事例の判断には大きな影響を及ぼす。著者はそれを、誰も被害者がいない「わいせつ物販売罪」は妥当か(p35f)、福岡県青少年条例をめぐる最高裁判決において、多数意見の「淫行」観の不自然さを批判した伊藤正巳判事の反対意見(p95)、そして、毎日新聞西山記者が外務省の蓮見事務官と「情交」を結び、外交機密を漏洩させた外務省秘密漏洩事件(185f)などについて解説する。特に、外務省秘密漏洩事件の最高裁決定に対する著者の批判は、力がこもっている。その要点は、西山記者が蓮見事務官を「性的に誘惑」して機密を得、その後彼女を捨てたのは「個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙し・・・社会観念上是認できない」という理由で西山を有罪にしたのは、「利害侵害」ではなく「倫理違反」を根拠にしており、理論的整合性を欠くという批判である(p199f)。西山と蓮見の「情交」は大人の男女間の倫理問題であり、倫理は刑事罰を加える論拠にはならない。「女性を誘惑した西山はけしからん、機密を渡した後に捨てられた蓮見さんは可哀想」という国民の「良識」におもねる判決なのである。
意外にも
ざっと読みましたが、帯にも書いてあるように
刑法など今まで学んだことがないという人にむけて
書かれていますから、とてもわかりやすく
書かれてます。厚みも値段も手ごろですし
興味はあるけど手軽に読みたいという方は
読んでみるとよいかもしれません。
ただし学部生などが導入として
読むつもりならば、あまりおすすめは
しません。教科書を読んだほうがはやいと
思います。
ある行為が「犯罪」になるケースとは
刑事裁判に関わる仕事で毎日裁判を傍聴していたころがあったが、自分の罪を認め罰を甘受するという被告人の裁判がほとんどだった。しかし、1度だけ「(罪に問われた)事実は認めるが、その事実は犯罪として成立しない」と主張し、著名な刑法学者、裁判官でも有罪、無罪が分かれる裁判があった。その裁判は今、同罪を解釈する上で重要な判例の1つになっているが、「その事実が刑法の条文の解釈に適合する犯罪か否か、仮に外形的に犯罪行為と認定されても処罰されるほど悪いことか否か」という点が議論になり、「犯罪を犯せば処罰される」と当然のように考えていた自分には極めて新鮮な裁判だった。

長い前置きになったが、「どのような場合に特定の行為が犯罪となり処罰されるのか」(業界的には「刑法総論」と称せられるようだが)という本書の内容は、傍聴席から見た刑事司法の世界では水や空気のように現実の裁判ではほとんど合意され、議論されることはほとんどないように思える。しかし、ごく稀にこの手の問題が持ち上がると、犯罪か否かの線引きで盛り上がる。刑法界の第一人者が書いた本書には、「やる気がない」「因果関係がない」「結果がない」など、普通の犯罪では考えられないような色々なケースで線引きが紹介されていて面白かった。当たり前だが、人に向けて石を投げ、当たらなくても貧血などで勝手に人が倒れた場合、傷害罪に問われない。因果関係が認められないから。業界の教科書を読んでも長すぎて分からなかった刑法総論だが、本書は分かりやすく書かれており、犯罪の線引きについて、理解が進んだ。一般の人には関心を惹起しなさそうだが、刑法学に関心がある人にとっては魅力のある内容だ。
やさしい刑法総論
・立て続いている東大法学部教授の岩波新書ですが、今度は刑法学の山口教授が登場。
・著者は文章が難解なことで有名なので、ちょっと心配だったのですが、
まったく問題ありませんでした。非常に読みやすい入門書です。
複雑な理論に深入りすることなく、岩波新書を読むようなそれなりに文章が読める人なら
誰でも十分に読みきれる内容に仕上がっています。
・全体の流れは、刑罰の概要に始まり(ここが少し細かくて読みづらいので我慢が必要
かも),刑法の基本原則,犯罪の成立要件へと続き、正当防衛などの犯罪が成立しない
特別な場合の説明で終わります。なお、不能犯,中止犯などの言及はありません。
・程度としては社会人の方、法学部以外の大学生、法学部新入生向けでしょうか。
法学部2年次以降の人や資格試験受験生には軽すぎるかと思います。
・なにかしら貴重な情報や、画期的な提言といったようなものがあるわけではないですが、
教養書としての刑法入門として、安定感はかなりよく、広くおすすめできる一冊です。
・ただ、本書は、犯罪・刑罰の一般原理を解説した(いわゆる刑法総論)本ですので、
こんな犯罪があるとか、あんな犯罪はこのような場合に成立するといった、
犯罪別の具体的な話が出てくる(いわゆる刑法各論)わけではありません。
刑法各論についての第二弾もぜひ出していただきたいなと思いました。
入門の入門として
新書の役割は専門的な事柄をずぶの素人にも解るように、そして最先端のことを平明に書いて読者に提供することにあります。そうでなければ新書の意味をなさないからです。本書は現在における犯罪について刑法はどの様に成り立っているのか、犯罪の成立、刑罰などについて書かれています。新書ですから著者自身の理論を展開する場所ではないので、あっさりとした内容の物になっていますが入門としては充分な知識を与えてくれています。本書を読み終えた上で、興味を持たれた方は次のステップに移る。これが新書の役割でしょう。本書では見事にそれが完遂されています。巻末に3冊+2冊の本を参考文献としてあげていますが、著者自身の本を挙げていないところが、共感を呼びます。何も刑法なんか知らないと言う人にはうってつけの新書です。
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