アジア・太平洋戦争―シリーズ日本近現代史...

- 岩波書店 価格 ¥ 819
home書籍CDDVDゲームソフトウェア家電キッチンおもちゃ・趣味
アジア・太平洋戦争―シリーズ日本近現代史〈6〉 (岩波新書)


岩波書店

価格(new/used): 819 円 / 459 円 より
発売日: (2007-08) アマゾン売上ランキング: 33331 位
新書 / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 6件

帝国臣民たちの多様な戦争体験
 1954年に生まれ、「戦争の時代と地続きの時代を生きてきた」日本近現代史研究者が、2007年に刊行した本。本書の主な対象時期は1940−45年である。アジア・太平洋戦争は、日中戦争の行き詰りが対英戦争を、更には対米戦争を必然化したことから生じ、開戦時に既に違法行為を犯している。重要戦略資源の獲得方針は一貫しているが、戦争目的は揺れ動いており、国民の間の反米意識も強くはなかった。首相の権限は弱く(東条首相の強さは内相・陸軍大臣の兼任、国民向けパフォーマンス、天皇の信頼に起因する)、天皇のみが最高度の軍事情報を把握し、国務と統帥の分裂は最後まで尾を引いた。初期作戦は成功したものの、予想外の船舶の喪失による輸送の困難は、多くの兵士の餓死・海没死や東南アジア経済の崩壊をもたらし、長期戦に伴う兵士の根こそぎ動員は、兵士の弱体化、さらには軍紀の乱れやリンチの横行、逃亡等を帰結し、かつ労働力動員との間に深刻な競合関係を生んだ。植民地では皇民化政策や強制連行が行われ、国内の民衆生活の悪化は国民の間に反軍感情と闇経済を育んだ。他方、総力戦体制は経営者優位の原則、小作農保護、階層差の平準化、年功序列型の生活給の拡大、女性の社会進出をも帰結し、これらの点に著者は戦後との連続性を見る。天皇と政府は戦争終結をなかなか決意しえず、結局戦後構想を持たないまま、開戦時と同様に閣議を軽視した手続きにより降伏を決め、直ちに公文書を焼却・隠匿したが、その後もソ連・中国共産党との戦闘は続き、東南アジアでは独立運動の抑止が行われた。冷戦下での国家指導者の戦争責任の曖昧化と「寛大な講和」は、日本の「戦後」を長引かせ、多くの問題を残したことを、著者は問題視する。アジア・太平洋戦争を、帝国という空間的広がりの中で、民衆生活に重点を置く形でコンパクトに論じる本。
個性ある太平洋戦史
 今話題の沖縄島民の集団自決を、本書は「日本軍将
兵は、(中略)強要した」と記述しています。その正否は
ともかく、ここには「戦争の時代に続く時代を生きてきた」
(あとがき)という著者の強い思い入れが、気合と共に込
められていると思いました。
 ただ、「戦争や戦場の現実に対するリアルな想像力の
回復」(はじめに)と言いながら、その面では、例えば学
童疎開という自分史にこだわりながら、冷徹に戦史を綴
った黒羽清隆『太平洋戦争の歴史』上・下(無謀、無定見
なインパール作戦がいかに悲惨な末路を辿ったかの記
述は今でも忘れられません。/ 講談社 1985)に到底及
んでいないと思います。
 むしろ、淡々と書かれた銃後の生活のあれこれや戦
時経済の破綻の記述に創見があったと思います。他に
も、開戦や終戦の決定にあたっての閣議の形骸化、即
ち明治憲法体制の空洞化や東条独裁の特質の指摘な
どを、興味深く読みました。児島襄のもの(中公新書
1965)をはじめとして幾多ある太平洋戦史に、また個
性ある一冊が加わったというべきでしょう。
             
 本書を含めた近現代史シリーズの各書を、興味津々で
読んでいます。中では、視覚素材やチーム研究を活用し
て、新しい幕末像を描いた井上勝生『幕末・維新』、世評
高い有馬史学でも十分でなかった「満蒙特殊権益」の歴
史的意義を内側から解明した加藤陽子『満州事変から日
中戦争へ』は、大変意味のあるものだったと思います。
苦悩の上に安堵があるのに・・・
過程の大事さが分からない奴ほど

性質が悪い奴はいないよ。それは子供みたいに無邪気な奴なら

許せるが、エリートの心理みたいな学者野郎ほど過程を

知らない。それは作られた道しか歩いてないからだろ。

泥水を歩いた人間にしか、泥水を歩く気持ちはわからないよ。

人間ってのは落とし穴にはまることで始めて

這い出すことを覚えるものさ。
真の<戦後からの脱却>を考える好著
■本を読むときときどきやるのですが、
「はじめに」と「おわりに」に目を通してから
おもむろに第一章から読み始めるんです。
この書は、その読み方をお薦めします。
まず著者の問題意識をきちっとおさえてからというのでしょうか。

■<すでに60年も経過したにもかかわらず、なぜ「戦後」は終わらないのか。
  私たちが過去の歴史にどのような形で向き合うのか、
  その向きあい方が問われる時代を、今、私たちは生きている。>
 こんな問題意識に対する答えを探るうえでの手がかりを与えてくれる
 貴重なしかも手軽な新書の一冊です。

 直接の体験に基づかない「戦争の記憶」しか持ち得ない戦後世代の私たちが、
戦争への想像力をしっかりと広げつつ、アジアを中心とした世界の鏡の中に写しだされる、
自らの過去の歴史を冷静に見つめることにより、
世界へとつながる平和意識を共有することができたときこそ、
真の意味で日本が<戦後からの脱却>を果すことができたといえるのでしょうか。
この間の歴史研究の成果を集大成
対英米開戦から終戦までの時期を、出来事(事件)を追いかけつつ、要所要所で戦争をめぐる「論」を整理して叙述されており、事実関係とそれがどんな意味を持っていたかという問題とが分かりやすくなっています。
また、日本の「加害」の問題はもちろん、国民が受けた被害、とくに無数の兵士がこうむった犠牲にも目が向けられています。実際に戦争を体験された世代の方が「あの戦争は何だったんだろう」と思って読まれても、十分期待にこたえるものになっていると思います。
本書を読んで、あらためてこの間の歴史研究が非常に大きな成果を上げ、蓄積してきたことを実感しました。著者は、そうした成果に広く目を配りながら、太い筋でアジア・太平洋戦争とはどんな戦争だったのかをえがきだしています。
ともかく戦争について知りたい、勉強したいと思っている若い世代にも、あの戦争は何だったのかふり返ってみたいと思っている年配の方にも、お薦めの1冊です。