シナリオ人生 (岩波新書)

- 岩波書店 価格 ¥ 735
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シナリオ人生 (岩波新書)


岩波書店

価格(new/used): 735 円 / 1 円 より
発売日: (2004-07) アマゾン売上ランキング: 215406 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 2件

「仕合わせ」人生
なんとテンポの速いスピード感のある文章なのでしょう。はじめはブッキラボーに感じられもしたのですが、読み進めるうちにそうではないことに気付きました。しかも、ところどころ出てくる具体的なモノ、それは「朝顔」であったり、「鯛」であったり、「血」であったりするのですが、くどくど描写されるわけでもないのにリアルにイメージとして立ち現れ、残像として印象に刻まれて参ります。映像の世界に携わっている方ならではの文章なのでしょうか。あっという間に読み通してしまい、そして感動しています。

アンデルセンの「赤い靴」を思い出しました。履いている本人の意思に関わらず(反しても)、夜となく昼となく野を越え山越え踊り続ける「赤い靴」のお話しです。シナリオ創作は、新藤さんにとっての「赤い靴」ではなかったかと思いつつ読みました。そんな靴を履くのはたいへんなことかもしれませんが、そういう靴(自分に合うもの)を見出し、良い妻、良い師友に恵まれ、一生踊り続けることができたなら、それはそれは仕合わせなことではないかと思います。

その仕合わせにあやかることのできる本です。お奨めいたします。

あらゆるドラマは破錠をはらんでいる
文化勲章を受勲した映画監督 新藤兼人さんの半生の記、岡山から出てきて苦労して撮影所に就職し、戦後、代表作「裸の島」を作るまでが、彼のシナリオライターとしての成長の過程として描かれている。孤独で貧乏な若者が、少しの偶然とものすごい努力で自分の中の非凡な才能を開花させていく話は楽しいし、わくわくする、しかし時代が日本の最も暗い時代、太平洋戦争をはさんだ時期なので、友人や先輩の戦死、姉の原爆死、妻の病死など間に挟まれるエピソードが苦く悲しい、それを新藤さんは映像表現と同じように、冷静に淡々と書いている。それがかえって、悲しみを深め、映画にかける彼の純粋さを浮かび上がらせている。彼がかつて世話になった今は亡き人たちの、彼を世話した場面のエピソードを丁寧に書いています。まるでこの本が亡くなった人の供養のために書かれたような。特に最初の妻「久慈さん」がなくなる場面は泣けます。