思想としての近代経済学 (岩波新書)

- 岩波書店 価格 ¥ 819
home書籍CDDVDゲームソフトウェア家電キッチンおもちゃ・趣味
思想としての近代経済学 (岩波新書)


岩波書店

価格(new/used): 819 円 / 27 円 より
発売日: (1994-02) アマゾン売上ランキング: 10717 位
- / 通常3~5週間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 15件

簡潔明快、勘所を押さえたみごとな逸品
リカードからケインズまで主要な経済学者を「セイの法則」を軸に論じる。論点は明快、しかし端寄らず勘所はがっちり押さえている。著者の感性は鋭く文章も緻密ながら伸びやか。言うことが無い。経済学の門外漢にとっては却って「セイの法則」の不自然さは理の当然の部類で、この辺りをしっかり押さえない啓蒙書が多く兼ねがね不思議だった。物資の行き渡っていない時代の遺物で、しかし、それが20世紀になっても論の中枢だったことは驚きだ。本書では意外にもウェーバーの評価が高く「プロ倫」は、しかし、「セイの法則」の前提があった時代においてのみ意味を持つ説明内容だという著者の指摘は目から鱗である。「プロ倫」の釈然としなさはそこにあったか、と。高名なシュンペーターには以前から好印象を持たなかったが、ここで著者は、「嫌味な奴だ」とシュンペーターの立論の線の細さのみならず、彼の本質をビシッと指摘しているのが、我が意を得た。ラッセルをしてその頭脳に震撼させたケインズの大才を見事に説明、まさにケインズ革命の何たるかが良く分かる。リカード、ワルラスなどについても見事な解釈。マルクスについてもむしろ唯物史観にその本領を見出している辺りも我が意を得た。ケインズへ向けて収斂する論旨だけでなく、各経済学者の論点をゆったりとした幅で押さえている点に牽強付会ではない良さがある。紙面の都合で出ていないがマルサスを論じて欲しかった。ケインズ〜マルサスの線はかなり太いと思うのだが。なお、出版年が13年前なので、具体例がサッチャー政権の失策に及びやや事例が古いが、日本では小泉政権以来類似の政策思想にあるので却って的確とも思える。
暗黙の前提「セイの法則」
この本の軸にあるのは、「セイの法則」という暗黙の前提と、それに対するケインズの反論であろう。

「セイの法則」というのは、「供給は、それ自身の需要を作り出す」というもの。
アダムスミスの「神の見えざる手」など知っていると、自明の前提のように錯覚を起こすし、アダムスミスは否定したつもりでも、いつのまにかそれを前提としてしまいがちである。
なにしろマルクスも抜け出せれなかったのだから。

しかし、「セイの法則」は、「耐久財のジレンマ」によってあえなく否定される。
「耐久財のジレンマ」というのは、簡単に言えば、新品とレンタル品とでは、使用による劣化の度合いの関数で、一方が定まれば他方が定まるのに、新品とレンタル品とではそれぞれ独立して市場が存在しているため、需要・供給の均衡価格と一致しない、というジレンマである。

この「セイの法則」を批判したのがケインズである。
しかし、こうした重要なことが意外と類書には書いていない。

高校の教科書として用いたいぐらいの良書である。是非一読をオススメする。
セイの法則
セイの法則がきわめて分かりやすく解説されている。20年ほど前は、この最重要法則を初心者向きに解説している本はガルブレイスの「マネー」ぐらいだった。ただ、この森嶋通夫の解釈で完全に尽きているのだろうか?人間の経済行動を考察するにあたり、19世紀の合理主義を捨てた点こそ、この法則を否定したケインズの洞見だと思うのだが。(人間は経済行動においても本質的に非合理的だと考えたのではないか。)
セイの法則、耐久財のジレンマ
商人資本の時代から産業資本の時代になって、地域間の価値のズレを利用して主に奢侈品の売買から利潤を得る時代から、機械を使って工場で拡大再生産する時代になると、生産財(≒資本財≒耐久財)というものが大きな存在になる。
消耗財だけだったら、需給関係だけで価格が決まり、売れ残った物は価格が下がるから在庫は一掃される。これがセイの法則。
しかし耐久財は高いからレンタルの場合が多い。すると、利子率と減価償却という需給関係以外のファクターが絡んでくる。

ここから、セイの法則が成立しなくなってくるらしい。そしてケインズ革命はここから始まった。

しかし専門家のなかでは当たり前のことが読者には当たり前でないので、「ここをこう言えばもっと分かりやすくなるんじゃ?」などと思ってしまうところもあった。
経済学なんて面白くないと思っている人に読んでほしい!
著者は長年ノーベル経済学賞の候補に挙げられ、よくノーベル賞にもっとも近い日本人と呼ばれていました。残念ながら数年前に亡くなってしまいました。ノーベル賞が取れなかったから残念なのではありません。日本の知性が一つなくなってしまったという感じです。
著者にとって経済学の発展は、たとえばワルラス、リカード、マルクス、ケインズと順次後者が前者を乗り越えるというような単線的なものではなく、時代ごとにベースになる経済活動・現象があり、その中の課題をそれぞれ解明しようとする試みの過程ということになります。従って経済学のビッグ・アイデアは経済活動・現象を解明する網の目のようなもので、その違いは網の目の形とその大きさの違いにあり、それによって説明されるものが異なることになります。著者の有名な「マルクスの経済学」はマルクスの「資本論」を近代経済学の視点から見直したものです。
本書の内容はNHKのテレビ講座がベースになっています。テレビ講座のテキストもありますが、それに加筆したものが本書です。一種の入門書みたいなものですが、他の入門書やサミュエルソンなんかの教科書を読んで経済学が面白くないと思った人に読んでほしい本です。