自叙伝 (1) (岩波文庫)

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自叙伝 (1) (岩波文庫)


岩波書店

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衝撃と感動の河上肇
岩波文庫として出版されている5巻本の一冊である。あるきっかけで半世紀以上も前に書かれたこの著作を手にしたが、ここ数年間読了した著作の中では、その衝撃度と感動において本書に勝るものはなかったように思う。マルクス主義こそ人々を艱難辛苦から救済する唯一無二の真正科学であると信じ、物心のすべてを捧げてプロレタリアート革命成就のために孤軍奮闘し、夢破れた河上肇の自叙伝である。いや孤軍奮闘ではなかった。愚痴ひとつこぼさず彼の活動を献身的に支えた河上夫人、その生き方もまことに感動的である。終戦の翌年に惜しくも逝去された河上氏がさらに20年命を長らえ、戦後日本の変貌を目の当たりにする機会に恵まれたら、ご自身の人生をどのように総括されたであろうか。
日本を代表する社会科学者
河上は、日本を代表する社会科学の一人。わが国におけるマルクス主義、マルクス経済学の導入にも重要な役割を果たした。獄中体験をも持つ河上の自伝は詳細きわまるもので、興味が尽きない。河上は、本人が認めているように、あることを了解したり理解することはけっして早くはなかったが、自分が分かったもの、共感したものは絶対に手放さなかった。ここに、河上の独自性がある。近代経済学の導入に熱心だった福田徳三と比べると、その学風は対照的だ。西欧の学風にきわめて敏感で消化も早かった福田と、納得したもののみを大切にした河上、日本での社会科学の受容を考える上で、示唆的な存在である。