カフカ短篇集 (岩波文庫)

池内 紀 - 岩波書店 価格 ¥ 630
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カフカ短篇集 (岩波文庫)

池内 紀
岩波書店

価格(new/used): 630 円 / 120 円 より
発売日: (1987-01) アマゾン売上ランキング: 15831 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 17件

「変身」を読む前に、
カフカといえば、不条理。
カフカといえば、「変身」という印象が強かった。

「変身」を読んで、ピンとこなかった人は、短編集を読むとよいかもしれない。
ひとつくらいは、面白いか、不思議か、妙に記憶に残るものがあるかもしれない。

それから、もう一度、「変身」を読み返すと、なんとなく、不条理の世界に浸っているのも悪くはないかもと思えるかもしれない。

ps。
自分は、カフカはジャズ喫茶で読むことにしている。
本を読むのに、音楽があれば、自分の世界だけに閉じこもってしまうことがないような気がするからです。

ひとそれぞれ、読書の仕方があると思いますが、、、
まずは先入観なしにただ読む
とかく難しいとか思われがちのカフカだが、そんな先入観なしに、ただ読んでみればいいと思う。純粋に面白い作品が多いのに驚く。その一面、深読みをしようと思えばどこまでもできる。まるで読者の想像力を試す事例のように。解説を最後に読んでください。
〈橋〉と〈コウモリ〉はシノニム?―カフカ「橋」を読み、考えたこと。
 太宰治は、自身に〈コウモリ〉を感じていた。私は、鳥ではありませぬ、獣でもありませぬ、そんな文句を作品の中でつぶやいている。ところで童門冬二さんはどこかで、どなたかの評伝を書いておられた。確か、そのどなたかが、こんな言葉を言ったと紹介しておられたはずである。私は、民衆と学者とをつなぐ、コウモリだ、と。太宰は〈コウモリ〉を否定的に、どなたかは肯定的に捉えていた。ように見える。あるいは、太宰もまた、肯定的に捉えようとしていたのかもしれない。太宰の作品に「お伽草紙」というのがある。そのなかに瘤取り爺さんに取材した作品がある。ところで、太宰はどこかで、桃太郎は日本一の由であるから、私の力には及ばぬ、これは、書かぬことにする、みたいなことを書いている。私にはこれが謎だった。あるいは、桃太郎はすでに芥川がすでにパロディ化しており、敬愛する作家への遠慮が、太宰に筆を執らせなかったのかと思ったことがあった。しかし、かちかち山に取材した作品は両者とも、ものしており、その可能性は否定された。では、なぜ? このごろ、ようやく、それがわかった。これは私のカンである(どなたかすでに、似た指摘をしておられるかもしれないことをお断りしておく)。鬼畜米英という言葉が生きていた時代、作品に鬼を登場させることは、あ、この鬼は、アメリカ人のたとえであるのだな、と読まれる可能性があったのではないか。もし、鬼を桃太郎に登場させたならば、日本がアメリカを退治する〈たとえばなし〉として映ってしまう。これに対し、太宰の試みでは、瘤取り爺さん(日本の為政者)の出方一つで、鬼(アメリカの為政者)が取る行動は、友好的・敵対的、はっきりと二分されてしまう、気をつけろ、太宰はそう警告していたのではないか。要するに太宰は、「お伽草紙」によって、日本とアメリカとを結ぶ、架け〈橋〉になろうとしていたのではないか。そして、自身に<橋>の役割を果たす能力がないことを悟った太宰は、女性と情死する道を選んだのではないか。
剥き出しのアイデアでつまった良書。難解な長編を解く鍵にも、入門にも。
カフカの作品群の中では最も読み易く
それでいて内容も濃い一冊。
入門にも最適と言えるし、変身、審判、城などの代表作で挫折したままになっているが、なんとなくカフカを無視できないでいる方などにもお薦めできる。

名作とされる長編のいくつかは、意図的に理解を拒絶するような描写や、迷う事自体を目的とした文章に量が割かれているとも考えられ
代表作の原型ともいえるようなアイデアが短い分量で構成されている本書の方が、
評価はさて置き、入り易いのは間違いない。

2ページほどしかない掌編の、最後の2行で読者をはっとさせるような構成力。
突飛で荒唐無稽に見えるが、どこか不気味な現実感を帯びた仕掛け。
短かろうと充分にカフカらしい魅力はつまっている。
基本的に誤魔化しの効かない作家なので、そんな手強い大作家の作った迷宮で途方にくれてしまった方は、是非本書を手にとるといい。

文学的な雰囲気の無い話で恐縮だが
気難しい上司に、仕事に対する姿勢なんかの説教を受けている状況はよくあると思う。
そこで、この短編集にある町の紋章の話をする。
仕事につまった時にいつもカフカがこんな事を書いてな、と思い出すんですよ。といった形で。
そうると、決まってその手の上司はウーンと考えこんで、説教から脱する事が出来た。
そんな時、とかく難解と言われるが決して現実と乖離した作家ではなかったのだなと思う。
本質を突き詰めてこれほど純度の高いエッセンスにできた者が他に居なかったと言うことだろう。
やはり、読まずにおくには惜しい作家だ。



嬉しい不意打ちの数々。
個人的には「中年のひとり者ブルームフェルト」という作品がおすすめ。
それなりに裕福な中年男性の前に奇怪なボールが現れて、彼に悪さをするのですが、
実は彼は職場でボールよりたちの悪い人間たちに囲まれて苦しんでいることが後になってから分かります。
怪異の害と現実の人間がもたらす害の比較に注意して読むと面白いです。
「万里の長城」も面白い。
長城の築城論から始まる、中国皇帝と民衆批評風の物語です。
どれもこれも自分の既存の概念体系に不意打ちを仕掛けて壊してくれる嬉しい奇襲に満ちています。ぜひご一読を。