検証 経済暗雲-なぜ先送りするのか

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検証 経済暗雲-なぜ先送りするのか


岩波書店

価格(new/used): 1,890 円 / 696 円 より
発売日: (2003-07-16) アマゾン売上ランキング: 30691 位
単行本 / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 3件

10年前の話。でも色褪せてない
住専に公的資金導入を決定するまでの政治、行政の動きを紹介。
大和銀のスキャンダル発覚前後から、大蔵官僚の思惑と違う方向に一気に物事が進んでいく様子は迫力がある。

前2作、特に「経済迷走」の読後感にも通じるが、国策決定が選挙対策などの政治家の都合で左右される現状にため息をついてしまう。国家レベルだけでなく、都道府県、市町村のレベルでもそれぞれ同様の(あるいはより醜悪な)私的紛争による行政停滞が起こっていると思うと暗澹たる気分にさせられる。

政策決定過程を知る有用な1冊
バブル崩壊後の92年から住専問題が論議された96年まで、
金融不安に対処する行政の政策決定過程について描かれている。
問題を先送りして危機を回避しようとした首脳の決断ミスと、
問題が表面化した後の不透明な決定について事実を丹念に取材し、
伝えている。

現在の金融行政は、新しい法律を作ったことで、状況が変化している。

しかし、政府の政策決定過程を見ても、
不透明で責任の所在はわかりにくく、状況は変わっていない。

金融行政に限らず、過去の政策決定過程の検証は、
本来、国会の中で綿密に検討されてしかるべきだと思う。
例えば、阪神淡路大震災における危機管理体制の不備は、
村山首相以下当時の関係者が、
地震発生直後からどのような行動をとっていたのか、

詳細に検討する必要があったと思う。
野党の力不足、認識不足からか、
こうした検証に力が注がれてこなかったことは、非常に残念だ。

本書には、金融問題について真正面から取り組んでいた官僚の一人として、
西村銀行局長が登場する。
彼の敗北は、大蔵省の中でも傍流官僚の悲哀を感じさせた。
西村局長のほかにも、日銀や宮沢首相らは、

当時としては問題意識を強く持っていたけれども、
政策として反映させることに失敗し、あるいは断念している。
その後の回想からは、金融問題がここまで大きな影響を与えるとは、
予測していなかったことが伝わってくる。

この本は、緻密に事実を書き上げつつも、
大きな決断をしようとして成し得なかった人間の姿を描いている。

事実を細かく伝えることで、人間の姿が浮かび上がってくる。
だからこそ、メディアが伝える人間ドラマは、読まれるのだろうと思った。

大嶽秀夫氏は、かつて
「ジャーナリズムと政治過程論は、綿密な関係にある」
と書いたことがある。
本書は、その発言を裏付ける作品といえる。
学生には、政治過程論の参考書としても役立つ1冊だ。

「先送りの美学」とは
TBS記者西野智彦氏による検証シリーズ3作目。前2作「経済失政」「経済迷走」が1996年秋から98年暮れまでを扱ったのに対し、今回は、92年夏から95年末と時代を遡り、「エピソード1」の位置付けとなっている。当時最大の金融問題であった住専と、兵銀破綻を軸に、97年金融危機の前史を、宮沢喜一等大物政治家や、大蔵省(現財務省、金融庁)・日銀の現役・OBへのインタビュー、および筆者が独自に入手した機密資料をもとに、詳細に語っている。その描写は迫真であり、今後、登場人物からの反論や、金融庁などの情報公開による反証がなされない限り、この時代の歴史描写の決定版として長く残るであろう。

本書の読み所は3つ。まず、住専問題への財政資金投入決断の真実、そして、兵銀最後の頭取となった元大蔵省銀行局長吉田正輝氏の悲劇を、読者ははじめて知ることになろう。第2に、大蔵省・日銀の英才が陥った、「跳ぶことが許されない」故の先送りの罠の実態。現実の延長線上で必至に考える大蔵省、空想力に勝るが跳ぶ実行力のない日銀の姿が、冷徹に描かれる。「再び92年にタイムスリップしたとしても、やはり同じことをしていた」という寺村元銀行局長の言葉は、真面目な日本人官僚の姿を悲しく物語る。最後がプロローグ、エピローグの見事さ。プロローグには福井日銀総裁誕生の裏話が埋め込まれ、エピローグは政治家の悲哀を感じさせる。

筆者による三部作は、金融問題を主に取扱っている。しかし、98年に破綻処理・資本注入法制が整備された後、金融にはドラマは乏しい。今後、より政治に軸を移し、イラク・北朝鮮問題にも足をのばし、政策決定過程の再現に挑むことを期待したい(HH)。